西洋の星の盗難事件
The Adventure of the Western Star

放送履歴

日本

オリジナル版(44分30秒)

  • 1991年06月29日 21時45分〜 (NHK総合)
  • 1992年05月01日 17時05分〜 (NHK総合)
  • 1998年11月24日 15時10分〜 (NHK総合)
  • 2003年06月20日 18時00分〜 (NHK衛星第2)

ハイビジョンリマスター版(49分30秒)

  • 2016年03月05日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)※1
  • 2016年08月10日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)※2
  • 2020年08月08日 17時10分〜 (NHK BSプレミアム)※3
  • 2021年11月04日 09時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2022年03月01日 13時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2022年10月12日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)
  • ※1 エンディング前半の画面上部に次回の放送案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※2 エンディング前半の画面上部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※3 エンディング最後の画面下部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり

海外

  • 1990年03月04日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 「〈西洋の星〉盗難事件」 - 『ポアロ登場』 クリスティー文庫 真崎義博訳
  • 「〈西部の星〉盗難事件」 - 『ポアロ登場』 ハヤカワミステリ文庫 小倉多加志訳
  • 「西洋の星の事件」 - 『ポワロの事件簿1』 創元推理文庫 厚木淳訳

原書

雑誌等掲載

  • The Adventure of the Western Star, The Sketch, 11 April 1923 (UK)
  • The Western Star, The Blue Book Magazine, February 1924 (USA)

短篇集

  • The Adventure of the Western Star, Poirot Investigates, The Bodley Head, 21 March 1924 (UK)
  • The Adventure of the Western Star, Poirot Investigates, Dodd Mead, 1925 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / 西洋の星の盗難事件, THE ADVENTURE OF THE WESTERN STAR / Dramatized by CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / 西洋の星の盗難事件 // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / THE ADVENTURE OF THE WESTERN STAR / Dramatized by CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 監督 リチャード・スペンス 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞 ミス・レモン 翠 準子  グレゴリー・ロルフ 瑳川哲朗 マリー・マーベル 榊󠄁原良子 レディー・ヤードリー 池田昌子  二瓶秀雄 中村秀生 岡部政明 加藤正之 佐藤正治 北村弘一 森田育代 松岡洋子 高山みなみ 小野健一 村國守平 茶 風林 / 日本語版 宇津木道子  山田悦司 福岡浩美 南部満治 金谷和美

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 演出 リチャード・スペンス 制作 LWT (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬/安原 義人 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞 ミス・レモン(ポーリン・モラン) 翠 準子  グレゴリー・ロルフ 瑳川 哲朗 マリー・マーベル 榊󠄁原 良子/大坂 史子 レディー・ヤードリー 池田 昌子  二瓶 秀雄 中村 秀生 岡部 政明 加藤 正之 佐藤 正治 北村 弘一 森田 育代 松岡 洋子 高山 みなみ 小野 健一 村國 守平 茶風林 宗矢 樹頼 松岡 大介 うすい たかやす 高階 俊嗣  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Captain Hastings: HUGH FRASER; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Miss Lemon: PAULINE MORAN; Inspector Dougall: BARRY WOOLGAR; Henrik Van Braks: STRUAN RODGER; Marie Marvelle: ROSALIND BENNETT; Gregorie Rolf: OLIVER COTTON; Lord Yardly: ALISTER CAMERON; Lady Yardly: CAROLINE GOODALL; Mullings: STEPHEN HANCOCK; Sergeant: IAN COLLIER; Hoffberg: BRUCE MONTAGUE; Hotel Receptionist: JULIAN GARTSIDE; Steward: BILL THOMAS / Developed for Television by Picture Partnership Productions / (中略) / Production Designer: MIKE OXLEY / Director of Photography: IVAN STRASBURG / Theme Music: CHRISTOPHER GUNNING; Incidental Music: RICHARD HEWSON; Conductor: DAVID SNELL / Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN / Director: RICHARD SPENCE

あらすじ

 ベルギー出身の国際的映画スター、マリー・マーベルのもとに、満月の晩にダイヤ〈西洋の星〉を盗むという脅迫状が届いた。西洋の星には対になる宝石があり、それはレディー・ヤードリーの持つ〈東洋の星〉と呼ばれるダイヤだという……

事件発生時期

不詳

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
アーサー・ヘイスティングスポワロの探偵事務所のパートナー、陸軍大尉
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
フェリシティ・レモンポワロの秘書
マリー・マーベルベルギー人映画スター、西洋の星の持ち主
グレゴリー・ロルフベルギー人映画スター、マリーの夫
モード東洋の星の持ち主、レディー・ヤードリー
ジョージモードの夫、ヤードリー子爵
マリングスヤードリー子爵家の執事
ホフバーグ宝石商
ヘンリク・バン・ブラクス宝石コレクター、オランダ人

解説、みたいなもの

 事件の展開はほぼ原作どおりだが、ドラマではバン・ブラクスという「出所にこだわらない」宝石コレクターを登場させ、結末にひとひねり加えている。また、原作ではアメリカ人だった映画スターの夫妻をベルギー人に変更したため、2人の名前も Mary Marvell (メアリ・マーベル) が Marie Marvelle (マリー・マーベル)、 Gregory Rolf (グレゴリー・ロルフ) が Gregorie Rolf (グレゴリー・ロルフ) と、ベルギー風(フランス語風)にアレンジされた。日本語音声ではわからないが、最後のポワロとマリー・マーベルの会話は、2人の母語であるフランス語で交わされている。
 本作品では宝石を狙う謎の存在として中国人の影がちらつくように、原作執筆当時、中国人は創作物のなかでしばしば神秘的な存在として扱われていた。原作発表の5年後の1928年、ロナルド・ノックスが探偵小説の公正さを期すためのルールとして挙げた〈十戒〉に「中国人を登場させてはならない」という項目があるのも、そうした風潮を反映してのこと。
 「クラブのキング」では「映画はどうも退屈ですが、でも俳優の演技というのは、これは興味がありますね」と言っていたはずのポワロだが、ベルギー人映画スターの出演作となると映画自体にも詳しいようだ。また、「コックを捜せ」ではおぼつかなかった「もみあげ」という言葉も、いつのまにかちゃんと使えるようになったらしい。なお、ヘイスティングスには「〔マリー・マーベルは〕ベルギーが生んだ唯一の映画スターでしょう?」と揶揄されてしまうが、オードリー・ヘプバーンはベルギーの生まれである。ただ、彼女の生年は1929年、代表作「ローマの休日」は1952年公開の映画で、劇中当時はまだ知られていない。マリー・マーベルの容姿も髪色などがヘプバーンを思わせるが、ヘプバーンの吹替で知られる池田昌子さんはマリー・マーベル役ではなく、彼女に対置されたレディー・ヤードリーの吹替を務めている。
 マリー・マーベルを待つポワロが花束に彼女へのカードを置いているが、その後、ホテルへ出かける前にもう一度花束がアップになった場面では、そのカードがなくなっている。しかし、カメラが引いてポワロがその花束を手にする際には、ヘイスティングスの体に隠れているものの、カードをはずして横に置いているように見える。また、ポワロの上着の襟にとめたブローチの向きが、カメラがヘイスティングスの背後にあるときは乱れているが、正面にあるときはさほどでもない。
 ポワロたちがホテルのマリー・マーベルを訪ねた際、原語だとエレベーターボーイが 'Second floor, sir. (3階です)' と言っているが、日本語には台詞がない。また、ヘイスティングスが二つのダイヤモンドの話を読んだという「ゴシップ雑誌」こと Tatler は、現在も刊行がつづく実在のイギリスの雑誌で、「ヒッコリー・ロードの殺人」のレナードや「ポワロのクリスマス」のハリー、「五匹の子豚」のエルサなどが読んでいるのを見ることができる。
 マリー・マーベルが映画にしたいという〈エリザベスとエセックスのお話〉とは、16世紀後半から17世紀はじめまで在位したイングランドの女王エリザベス一世と、第2代エセックス伯ロバート・デヴァルーにまつわる出来事のこと。エセックス伯は、生涯独身を貫いたエリザベス一世の寵臣だったが、最終的に反乱を起こして処刑された。そして、劇中でそのロケ地にと希望されるヤードリー・チェイスの撮影がおこなわれたのは、「スタイルズ荘の怪事件」ではポワロたちベルギー人亡命者の住まい内部として使われた、バッキンガムシャーのドーニー・コート(ただし、撮影は本作のほうが先)。15世紀に建てられたこのチューダー朝建築の邸宅は、このドラマシリーズ以外にも様々な映画やドラマの撮影に使われる場所で、エリザベス一世を主役とするケイト・ブランシェット主演の映画「エリザベス」や、その続篇の「エリザベス ゴールデン・エイジ」の撮影にも実際に使われている。また、ジェラルディン・マクイーワンやジュリア・マッケンジー主演の「ミス・マープル」シリーズでも、「書斎の死体」のゴシントン館(「鏡は横にひび割れて」のゴシントン館は別の場所での撮影である)、「動く指」の牧師館、「シタフォードの謎」のシタフォード山荘内部、「蒼ざめた馬」の〈蒼ざめた馬〉などとして度々使われているほか、「主任警部モース」の「死者たちの礼拝」や「バーナビー警部」の「カラスの森が死を招く」などにも登場する。なお、最初にマリー・マーベルが言いまちがえた「サセックス」とはイングランド南東部の地方の名前で、対するエセックスはロンドンから北東に位置する地域。両者はともにイングランド七王国時代にサクソン人が築いた国の名を引き継いでおり、サセックス (Sussex) の名は南サクソン (South Saxon)、エセックス (Essex) の名は東サクソン (East Saxon) に由来する。ちなみに、西サクソン (West Saxon) に由来するウェセックス (Wessex) という地域もある。
 ジャップ警部が「〔バン・ブラクスを〕もう1か月も追ってるんです」と言うところは、原語だと 'I've been after him for months. (もう何か月も追ってるんです)' という台詞で、原語の警部の苦労は数倍。また、そのヘンリク・バン・ブラクスがオランダ人であることは、日本語音声でのみ言及される設定。彼の名字に含まれる「バン (van)」は、地名をつなげて出身地に由来するオランダ系の名字を構成するオランダ語の前置詞で、日本語はそこからオランダ人と推定したのだろう。ただ、「スタイルズ荘の怪事件」にもバン・デル・シュタットという名字のベルギー人亡命者がいたように、ポワロの故国ベルギーも人口比ではオランダ系住民が多数派で、同様の名字が見られる。一方、原語のみで言及されるホフバーグの店の所在 Hatton Garden (ハットン・ガーデン) は、宝石商が集まっていることで有名なロンドンの通りである。
 劇中で確認できる「ヤードリー」のつづりは、ヤードリー・チェイス最寄り駅の駅名看板から Yardley だが、 Agatha Christie's Poirot のエンディングクレジットおよび原作では Yardly である。
 ヤードリー・チェイスでの事件翌朝の新聞に書かれた「予測された昨夜の犯行、宗教に関係ある者の仕業か」は、原語だと 'Informed sources were last night speculating that religious fanatic were responsible. (情報筋の昨夜の推測によれば、狂信者の仕業か)' という表現で、別に犯行は予測されていない。まだ満月でもなかったし。
 ポワロがホフバーグに差し出す名刺のデザインは、「夢」でミス・レモンがタイプしていた便箋の上部に印刷された差出人の情報と同じデザイン。オリジナル版だと「夢」の映像はやや不鮮明だったが、こちらははっきりと読むことができる。この名刺は、「エンドハウスの怪事件」でポワロがお見舞いの花に添えたり、「消えた廃坑」の銀行で窓口に提示されたりもしていた。なお、この名刺に書かれた電話番号は、「ベールをかけた女」「誘拐された総理大臣」で電話のダイヤルに書かれているのが見えたのと異なり、ふたたび「死者のあやまち」の原作どおりにトラファルガー局8137番である。
 ポワロがホフバーグの店へ乗っていったタクシーと、そのあとロルフがホフバーグの店まで乗りつけ、その後クロイドン空港へ乗っていったタクシーは、同一ナンバーの同じタクシーである。
 車で工事現場に差し掛かったジャップ警部が「警察だ。こっちを優先してくれ」と言った台詞は、映像に対して日本語音声の始まりが大きく遅れている。
 ホテル・マグニフィセントとして撮影に使われた建物は、フリーメイソンリーのイギリス支部(ユナイテッド・グランド・ロッジ・オブ・イングランド)のフリーメイソンズ・ホール。宝石商ホフバーグの店がある路地は、現地のハットン・ガーデンではなく、リバプール・ストリート駅東側のサンディーズ・ロウ(冒頭、ホフバーグの車がやってきた通りの奥に映ってしまっている現代的な建物は、1980年代後半に建てられた、リバプール・ストリート駅横手のブロードゲートである)。そして、その屋内のオフィスは、ヤードリー・チェイスと同じドーニー・コートの一室で撮影されている。ヤードリー・チェイスへ向かう汽車の撮影がおこなわれたのは、「コックを捜せ」「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」「スタイルズ荘の怪事件」でも撮影に使われたブルーベル鉄道で、ヤードリー・ホールトの駅は元ケッチズ・ホールト駅。クロイドン空港は実在の空港だが、撮影場所はサセックスにあるショアハム空港(現ブライトン・シティ空港)。空港へ向かうバン・ブラクスとジャップ警部が通りがかった工事現場は、イートンのコモン・レーン。この道の両側に並ぶのはイギリスの名門イートン校の寮で、「もの言えぬ証人」「ナイルに死す」の原作によれば、イートン校はヘイスティングスの出身校である。
 冒頭、ジャップ警部がやってくる道の両脇には黒色の長いシートが敷かれているのがわかり、撮影にあたって現代の道路標示を隠したものと見られる。
 ホフバーグの店を見張る(最中なのに買い食いをして目を離す)ヘイスティングスの横を通りすぎる、黒髪の男性の左のもみあげがはずれているような……
 » 結末や真相に触れる内容を表示

ロケ地写真

カットされた場面

日本

オリジナル版

[01:45/1:26]連行されるバン・ブラクス 〜 マリー・マーベルを迎える準備をするポワロとミス・レモン 〜 取調室でのジャップ警部とバン・ブラクスのやりとり
[20:23/2:03]ヤードリー邸を引きあげようとしたポワロとヘイスティングスが、玄関前でジャップ警部に会って話をする場面
[36:06/0:52]停止する飛行機 〜 ロルフの出国手続き 〜 ポワロとマリーの会話の前半
[36:52/0:11]道路の工事現場の様子
[37:22/0:11]ポワロをレディー・ヤードリーと待ちつつ、部屋をうろうろするヘイスティングス

ハイビジョンリマスター版

なし

映像ソフト

  • [VHS, LD] 「名探偵ポアロシリーズ Vol.5 総理大臣の失踪, 〈西部の星〉盗難事件」(字幕) ハミングバード
  • [VHS] 「名探偵エルキュール・ポアロ 第17巻 『西部の星』盗難事件」(字幕) 日本クラウン
  • [DVD] 「名探偵ポワロ 10 誘拐された総理大臣, 西洋の星の盗難事件」(字幕・吹替) ビームエンタテインメント(現ハピネット・ピクチャーズ※1
  • [DVD] 「名探偵ポワロ [完全版] 10 誘拐された総理大臣, 西洋の星の盗難事件」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ※2
  • [DVD] 「名探偵ポワロ DVDコレクション 43 西洋の星の盗難事件」(字幕・吹替) デアゴスティーニ・ジャパン※3
  • [BD] 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX Disc 5 二重の罪, 安いマンションの事件, 誘拐された総理大臣, 西洋の星の盗難事件」(字幕/吹替) ハピネット・ピクチャーズ※4
  • ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX1」にも収録
  • ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX1」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 3」にも収録
  • ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
  • ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 1」に収録
2024年7月15日更新