ポワロのクリスマス
Hercule Poirot's Christmas

放送履歴

日本

オリジナル版(99分00秒)

  • 1997年12月29日 17時05分〜 (NHK総合)

ハイビジョンリマスター版(102分30秒)

  • 2016年08月13日 15時00分〜 (NHK BSプレミアム)※1
  • 2017年01月18日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2021年01月23日 16時17分〜 (NHK BSプレミアム)※2
  • 2021年12月07日 09時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2023年03月29日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)※3
  • ※1 エンディング前半の画面上部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※2 エンディング最後の画面下部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※3 BSプレミアムでの放送は、オープニング冒頭の画面左上にBS4K同時放送のアイコン表示あり

海外

  • 1995年01月01日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 『ポアロのクリスマス』 クリスティー文庫 村上啓夫訳
  • 『ポアロのクリスマス』 ハヤカワミステリ文庫 村上啓夫訳

原書

  • Hercule Poirot's Christmas, Collins, 19 December 1938 (UK)
  • Murder for Christmas, Dodd Mead, February 1939 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

海外ドラマ // 名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // DAVID SUCHET / PHILIP JACKSON / ポワロのクリスマス, HERCULE POIROT'S CHRISTMAS / Based on the novel by AGATHA CHRISTIE / Dramatized by CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / ポワロのクリスマス // DAVID SUCHET / PHILIP JACKSON / HERCULE POIROT'S CHRISTMAS / Based on the novel by AGATHA CHRISTIE / Dramatized by CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原 作 アガサ・クリスティー 脚 本 クライブ・エクストン 監 督 エドワード・ベネット 制 作 LWT(イギリス) / 声の出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞  シメオン・リー 大塚󠄀 周夫 アルフレッド 安原 義人 リディア 田島 令子 ハリー 大塚󠄀 明夫 ジョージ 堀 勝之祐  宗形 智子 島本 須美 江原 正士 井上 瑤 今西 正男 辻󠄁 つとむ 寺島 幹夫 高宮 俊介 秋元 羊介 石井 直子 小野寺啓子 / 日本語版スタッフ 宇津木道子  兼子 芳博 南部 満治 浅見 盛康  山田 悦司

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 クライブ・エクストン 演出 エドワード・ベネット 制作 LWT (イギリス)  出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞  シメオン・リー 大塚󠄀 周夫 アルフレッド 安原 義人 リディア 田島 令子/要田 禎子 ハリー 大塚󠄀 明夫 ジョージ 堀 勝之祐  宗形 智子 島本 須美 江原 正士 井上 瑤 今西 正男 辻󠄁 つとむ 寺島 幹夫 高宮 俊介 秋元 羊介 石井 七央子 小野寺 啓子 石田 圭祐 野中 秀哲 伊藤 亜矢子 船木 まひと 鈴木 圭悟  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 兼子 芳博 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Directed by: EDWARD BENNETT / Produced by: BRIAN EASTMAN / Exective Producer: SARAH WILSON / Assosicate Producer: CHRISTOPHER HALL; Music: CHRISTOPHER GUNNING / Director of Photography: SIMON KOSSOOFF B.S.C.; Editor: ANDREW McCLELLAND; Sound Recordist: RUDI BUCKLE / Production Designer: ROB HARRIS; Costume Designer: ANDREA GALER; Make up: SUZAN BROAD / Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Japp: PHILIP JACKSON; Simeon Lee: VERNON DOBTCHEFF; Alfred: SIMON ROBERTS; Lydia: CATHERINE RABETT; George: ERIC CARTE; Magdalene: ANDREE BERNARD; Harry: BRIAN GWASPARI; Pilar: SASHA BEHAR; Sugden: MARK TANDY; Stella: OLGA LOWE; Horbury: AYUB KHAN DIN; Tressillian: JOHN HORSLEY; Young Simeon: SCOTT HANDY; Young Stella: LIESE BENJAMIN; Gerril: OSCAR PEARCE; Sgt. Coombes: STEVE DELANEY; Shopkeeper: COLIN MEREDITH; Mr Charlton: PETER HUGHES; Cook: JOANNA DICKENS; Constable: MICHAEL KEATS; Train Steward: CHRISTOPHER WEBBER / (中略) / A CARNIVAL FILMS PRODUCTION in assosiation with LWTP; © LWT PRODUCTIONS MCMXCIV

あらすじ

 静かなクリスマスを予定していたポワロだったが、シメオン・リーと名乗る老人から自邸に呼びつけられる。しかし、呼び集めた家族に不和の種をまいて楽しんでいたシメオンは、ポワロが到着したその日、喉を切られて死ぬ。犯人は家族か、それとも外部の人間か……

事件発生時期

1936年12月下旬

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
シメオン・リーゴーストン・ホールの主
アルフレッド・リーシメオンの息子
リディア・リーアルフレッドの妻
ジョージ・リーシメオンの息子、下院議員
マグダレーナ・リージョージの妻
ハリー・リーシメオンの息子
ピラー・エストラバドスシメオンの孫娘
トレッシリアンゴーストン・ホールの執事
ホーブリーシメオンの従僕
チャールトンリー家の弁護士
ハロルド・サグデンシュロップシャー警察警視
クームズシュロップシャー警察巡査部長
ステラ・ド・ザイフデルシメオンが南アフリカで出会った女

解説、みたいなもの

 「盗まれたロイヤル・ルビー」以来のクリスマスを舞台にしたエピソード。原作はクリスティーの姉の夫の、血にまみれた、まごう事なき暴力的な殺人を読みたいという希望に応えて書かれた作品で[1]、慈愛と寛容の季節であるクリスマスを舞台にしながら、久しぶりに集まった家族のあいだに生じる緊張と不和を描く。しかし、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を思わせる浄化と再生の余韻や、クリスマスプレゼントをめぐるポワロとジャップ警部の微笑ましいやりとり、そして適宜差し込まれるクリスマスの風俗や音楽が、クリスマスストーリーとしての印象を強く残す。原作の主要な登場人物のうち、ドラマではデビッド夫妻とスティーブン・ファーがカットされたが、前者はアルフレッド夫妻に、後者はハリーらにその要素が取り込まれた。一方、ステラ・ド・ザイフデルの登場はドラマオリジナルである。
 若きステラが南アフリカで話している(オリジナル版では原語音声のみ)のはアフリカーンス語。これは、17世紀半ばに当地へ最初に入植したオランダ人の話すオランダ語をベースに、現地人や他国からの移民の話す言葉が混ざって成立した言語で、ステラはそうした移民の子孫(ブール人、アフリカーナー)と見られる。また、そのステラが「嫁入り先を見つける前に父が亡くなったの」と言う台詞は、原語だと 'My father got tired of trying to marry me off. (嫁入り先を探すのに父は疲れたの)' という表現で、父親はたぶんまだ存命である。
 劇中は寒々しいホワイトクリスマスだが、撮影がおこなわれたのは1994年の4月[2]。そのため、よく見ると木々の緑は色濃く、登場人物の吐く息も白くならない。また、一見雪をかぶってるように見える教会の木の一部は、花の咲いた桜である。それ以外の雪はすべて紙による作り物で、撮影中には雨まで降り出したが、幸いにして、偽物の雪がひどい状態になる前に撮影を終わらせることができたという[2]
 ジャップ警部が夫人の実家の人々を評して「連中は歌さえ歌ってりゃいいんです」と言うのは、夫人の一家に限って歌好きなのではなく、「歌の国」として知られるウェールズの人々のパブリックイメージを踏まえた台詞である。
 ハイビジョンリマスター版の序盤に、部屋の暖房が効かなくてポワロが電話した相手のディッカー氏は、「4階の部屋」「二重の罪」などに登場していたホワイトヘイブン・マンションのドアマン。原語音声では当初より名前で呼ばれていたのだが、日本語音声ではずっと訳し落とされたり「ドアマン」と呼ばれたりしていて、その名前が言及されるのは今回が初めて。そして、声だけの出演ながら、これが彼の最後の登場となった。ただ、原語音声だと電話の向こうの声は不明瞭で、また Agatha Christie's Poirot のエンディングにも役のクレジットがなく、以前と変わらずジョージ・リトルが演じているかははっきりしない。
 ポワロが汽車で注文した「ブラウン・ウィンドソー・スープ」ことブラウン・ウィンザー・スープは、イングランドの王城の所在地であるウィンザーの名を冠してはいるが、イギリスのまずい食事の代表例のように扱われるメニューで、ポワロの失望の場面はそれを踏まえたもの。しかし、イギリスで20年暮らしているポワロが、さすがに Windsor (ウィンザー) を読み間違えるかしらん。
 劇中は1896年の40年後なので1936年の12月のはずだが、ベッドでマグダレーナが読んでいる雑誌は1932年の9月24日号。この場面でマグダレーナは「わたし退屈で死にそうだわ」と言っており、そんな古い雑誌でも読まないではいられないほど退屈だという演出なのだろうか。
 汽車のなかの会話では、リー家ではピラーの訪問は知っているがハリーの帰宅は知らないとのことだったが、その後のシメオンとアルフレッド夫妻の会話では、二人の来訪が同時に知らされる。もっとも、単にシメオンがハリーたちに事実を伝えていなかっただけかもしれないけれど。
 ハリーがポワロの恰好を揶揄した際に言及した「スパッツ」とは、近年の日本語で言う、脚に穿く伸縮性の衣類のことではなく、短靴の上から足首を覆って埃や汚れを防ぐカバーのこと。なお、前者の衣類を「スパッツ」と呼ぶのは、日本独自の用法である。
 事件の晩のリー家のディナーでは、ハリーのみが平服で着席している。ほかの参加者に見られるように、こうした家のディナーでは着替えをして臨むのが通例であり、ハリーの服装には、そうしたマナーを斟酌しない彼の性格が示されている。また、そのディナーが済んだあと、リディアが険悪な会話をさえぎって「ああ皆さん、そろそろ」と言う台詞は、原語だと 'Ah, ladies, shall we? (ああ、女性の皆さんはそろそろ)' と女性陣に呼びかけている。その後の場面で女性陣だけが食堂から出ていく様子に見られるように、食後には女主人の合図で女性陣が先に退出し、客間でお茶やコーヒーを飲みながら、男性陣が男性だけの会話を終えて合流するのを待つ慣習があった。なお、その「客間」は英語で drawing room と言い、元来、食後に退出してくつろぐ部屋の意味であった。
 シメオンの部屋の前にアルフレッドが駆け寄った際の台詞は、日本語だと一貫して「開かない! 鍵がかかってる!」だが、原語だとリアルタイムには 'It's locked! It's locked! (鍵がかかってる!)' と言っているのに、リディアの説明中の回想では 'Stop! Stop! (やめろ!)' となっている。
 日本語音声では、「サグデン警視がスコットランド・ヤードに電話する前に、〔ジャップ〕警部が近くにいることを知らせたんですよ」とポワロが警部に説明していたにもかかわらず、警視は警部の登場に驚きを示す。原語音声だとポワロの説明は 'Superintendent Sugden was going to call in Scotland Yard in any case. (サグデン警視はいずれにしてもスコットランド・ヤードへ電話したでしょう) So I suggested that as you were just across the border... (それで、警部がせっかく国境のすぐ先にいるのだから……と提案したんです)' という表現で、 suggested (提案した) の相手は明言されていないが、サグデン警視ではなくジャップ警部だと受け取れる。
 日本語音声では、尋問の場面でホーブリーが「〔ダイヤは〕昨日着いたばかりです」と言うが、ダイヤの到着は21日のことなので、23日からすれば一昨日になるはずである。なお、原語ではちゃんと 'They arrived the day before yesterday. (一昨日着きました)' と言っている。また、ホーブリーの彼女が勤めているという「バター工場」の原語は United Dairies という当時実在した乳業メーカーの名前で、現在は数度の合併・買収を経てアイルランドの大手食品メーカー、グリーンコア・グループの一部になっている。
 ポワロがパブでジャップ警部やハリーからおごりの申し出を受けているように、イギリスのパブでは割り勘はせず、誰か一人が一同の分をまとめて注文して支払うのが一般的である。各人の支払いを均一にするのは、その注文役を順にまわしていくことでおこなう。また、そのあとにハリーが「ところで、このあたりの酒場の営業時間をどう思いますか?」と訊く場面があるが、原語では「このあたり」ではなく this country (この国) について訊いている。第一次大戦以来長く、イギリスではパブの営業可能な時間が法律で細かく制限され、昼食時と夕食時しか営業できなかったことで知られ、その制限の妥当性について警察官であるジャップ警部に議論をふっかけるというのは、いかにも外国帰りで奔放なハリーらしい行動と解釈できる。なお、リー家のような家の男性はそもそもパブへ通うことがめずらしく、「ぼくならパブを捜せばいますよ」という発言を含め、ここでもハリーの性格が顕示されている。
 ハリーがアルフレッドを評した「ぐずでのろまな」の原語 stick-in-the-mud は「考えが古くて退屈な」といったニュアンスで、直前の「いい子」という評価とつながる。
 マグダレーナから打ち明け話をされたポワロが、日本語では「何も言いません」と言いながらその後すぐにジャップ警部に報告しているが、原語だとポワロの台詞は 'I do not judge, madame. (わたしはどうこう言いません)' という表現で、つまりこれは夫に内緒で男に電話をかけたことの是非をとやかく言うつもりはないということであって、警部には言わないでほしいという最初の頼みに関しては微笑するのみで返答を避けていた。
 マグダレーナがかつてハンブルドンで一緒に暮らしていたという「ジョーンズ司令官」の原語 Commander Jones は「ジョーンズ海軍中佐」の意で、これは、「エンドハウスの怪事件」に登場したチャレンジャー中佐や、「誘拐された総理大臣」に登場したダニエルズ中佐と同じ階級である。また、「〔マグダレーナは〕ポッツ氏の遺産を全額持ち逃げ。あとには借金の山ですよ」の原語は 'She left with most of the Commander's savings, and debts all over Hampshire. (中佐の貯金をほとんど持ち逃げ。ハンプシャー中に借金を残して)' という表現。 Commander (中佐) という表現だけでなく、ポッツ氏と暮らしていたというウィルズデンはロンドン北西部なのに対し、ハンブルドンはハンプシャーにある村なので、原語で彼女が持ち逃げした貯金はジョーンズ中佐のものである。
 ピラーの言葉などから重要な気づきを得て愕然とするポワロにジャップ警部が「どうしました、ポワロさん」と言ったり、何者かに襲われたピラーに駆け寄ってポワロが「なんとまあ」と言ったりするのは、日本語のみの台詞である。
 「名探偵ポワロ」ではハイビジョンリマスター版でのみ見られる場面で、スペインの内戦についてジョージが「そりゃあ、いわゆる共和党が圧力をかけた上での決断ではありましたが、わたしはフランコ将軍の優勢は揺るがないと確信しているんですよ」と言うところは、原語だと 'It is unfortunate that these so-called Republicans have forced him to take the action he has taken, but take it from me, Generalissimo Franco has right on his side. (いわゆる共和派に追い込まれてああした行動に出ることになったのは残念ですが、わたしから見れば正義はフランコ将軍の側にありますよ)' という台詞で、ここでの so-called Republicans (いわゆる共和派) とは、スペインの内戦でフランコ将軍派と対立していた人民戦線派のこと。また同じく、ホーブリーがカップを割った件についてトレッシリアンが話す場面で、日本語だと「わたしが警視の到着を伝えるために台所に行ったときでした」と説明されるが、実際には出迎えを終えて台所へ仕事に戻ったところホーブリーから質問があってサグデン警視の名前が出たという経緯であった。原語でもおおよそそのように説明されている。
 ロンドンの街角で救世軍の人たちが歌っていたり、自室で食事の用意をするポワロが口ずさんでいたり、またクリスマスの日に教会のオルガンが奏でていたりするのは「天なる神には (It Came upon the Midnight Clear)」。この歌詞の歌はイギリスとアメリカで一般に知られるメロディーが異なり、劇中で歌われているのはアーサー・サリバンがイギリスの伝統的なメロディーを編曲し、俗に Noel と呼ばれるほうである。シメオン・リーのテーマとでも呼ぶべき、シメオンが登場する場面で流れる重々しい劇伴は「世の人忘るな (God Rest Ye Merry, Gentlemen)」のメロディーを取り込んだもの。この曲はイギリスの伝統的なクリスマス・キャロルで、ディケンズの『クリスマス・キャロル』にも登場するほか、ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズで、クリスマスを舞台とする「青い紅玉」の劇伴「ヘンリー・ベーカーのクリスマス (Mr Henry Baker's Christmas)」にもこのメロディーが取り込まれている。村の広場で子供たちが歌っているのは「三隻の舟 (I Saw Three Ships)」、ジャップ警部の夫人の実家で歌っているのは「御空にこだます (Ding Dong Merrily on High)」、パブで流れているピアノ曲は「おめでとうクリスマス (We Wish You a Merry Christmas)」、事件解決後にゴーストン・ホールで歌っているのは「荒野の果てに (Angels We Have Heard on High)」。クリスマスイブに教会で歌われるのは On Christmas Night All Christians Sing で、この曲は俗に Sussex Carol としても知られる。
 原作の舞台はイングランド中部という設定の架空の州ミドルシャー、ドラマの舞台はウェールズに近いシュロップシャーという設定だが、撮影が行われた土地はイングランド南東、ケント州カンタベリー近郊にあるチラムという町で、聖歌隊には実際の住民が扮しているという[2]。ここはジェラルディン・マクイーワン主演の「ミス・マープル」の「動く指」の舞台、リムストックとしても撮影に使われており、本作ではゴーストン・ホールに仕立てあげられたチラム城は、そちらではパイの家になっている。ゴーストン・ホールの最寄り駅は、「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」「スタイルズ荘の怪事件」「死人の鏡」で使われてきたブルーベル鉄道のホーステッド・ケインズ駅。「プリマス行き急行列車」「ABC殺人事件」でも同駅のプラットホームが見られるほか、ブルーベル鉄道「コックを捜せ」「西洋の星の盗難事件」でも撮影に使われている。21日にポワロがジャップ警部と別れたのは、ロンドンのハートフォード・ストリートとシェパード・ストリートの交差点である。
 シメオン・リー役のバーノン・ドブチェフは、アルバート・フィニー主演の映画「オリエント急行の殺人」にも出演しているほか、ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」の一篇、「六つのナポレオン」のメンデルシュタム役でも見ることができる。また、リディア・リー役のキャサリン・ラベットも、同「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズの「まがった男」において、若かりしナンシー・デボイ役を演じている。コンチータ役のサーシャ・ビハールは、ベネディクト・カンバーバッチ主演「シャーロック2」の「バスカヴィルのハウンド」にもモーティマー博士役で出演。トレッシリアン役のジョン・ホースリーは、ジョーン・ヒクソン主演「ミス・マープル」の「復讐の女神」ではワンステッド教授役、フランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演の「なぜエバンズに頼まなかったか」ではスプラッグ弁護士役を演じている。
 シメオンの吹替の大塚周夫さんとハリーの吹替の大塚明夫さんは実際に親子である。
 ハイビジョンリマスター版では欧文クレジットにオリジナル版や前後の作品と異なるフォントが使用されており、これは「愛国殺人」のハイビジョンリマスター版でも使われていたフォントである。
 » 結末や真相に触れる内容を表示
  1. [1] アガサ・クリスティー (訳: 村上啓夫), 『ポアロのクリスマス』, 早川書房(クリスティー文庫), 2003, p. 4
  2. [2] ピーター・ヘイニング (訳: 岩井田雅行, 緒方桂子), 『テレビ版 名探偵ポワロ』, 求龍堂, 1998, pp. 52-53

ロケ地写真

カットされた場面

日本

オリジナル版

[0:05:10/0:27]夜空の月 〜 シメオンとステラの楽しげな会話 〜 シメオンがつないである馬を見る場面 〜 ステラの部屋のドアの前に来るシメオン
[0:09:01/1:22]ポワロが部屋の暖房が効いていないことに気づき、管理人に電話するも、クリスマス明けまで直らないと言われる場面
[0:23:27/0:19]22日夜、食堂での一同の会話冒頭
[0:34:45/0:22]遺体が運び出され、ポワロとジャップ警部がゴーストン・ホールに到着する場面 〜 ジョージの尋問冒頭
[0:55:41/0:49]トレッシリアンの尋問後半、ジョージの電話とホーブリーに関する部分
[1:10:50/0:07]部屋の前の廊下から1階を覗き込むポワロ

ハイビジョンリマスター版

なし

映像ソフト

  • ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX3」にも収録
  • ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX2」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 6」にも収録
  • ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
  • ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 2」に収録
2024年3月8日更新