プリマス行き急行列車 The Plymouth Express
放送履歴
日本
オリジナル版(44分00秒)
- 1991年09月16日 22時15分〜 (NHK総合)
- 1992年05月08日 17時05分〜 (NHK総合)
- 1994年03月10日 17時05分〜 (NHK総合)
- 1998年12月03日 15時10分〜 (NHK総合)
- 2003年07月07日 18時00分〜 (NHK衛星第2)
ハイビジョンリマスター版(50分00秒)
- 2016年04月02日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
- 2016年09月07日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)
- 2020年09月05日 17時10分〜 (NHK BSプレミアム)
- 2021年11月08日 09時00分〜 (NHK BS4K)
- 2022年03月02日 13時00分〜 (NHK BS4K)
- 2022年11月09日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)
海外
- 1991年01月20日 (英・ITV)
原作
邦訳
- 「プリマス行き急行列車」 - 『教会で死んだ男』 クリスティー文庫 宇野輝雄訳
- 「プリマス行き急行列車」 - 『教会で死んだ男』 ハヤカワミステリ文庫 宇野輝雄訳
- 「プリマス急行」 - 『ポワロの事件簿2』 創元推理文庫 厚木淳訳
原書
雑誌等掲載
- The Mystery of the Plymouth Express, The Sketch, 4 April 1923 (UK)
- The Plymouth Express Affair, The Blue Book Magazine, January 1924 (USA)
短篇集
- The Plymouth Express, The Under Dog and Other Stories, Dodd Mead, 1951 (USA)
- The Plymouth Express, Poirot's Early Cases, Collins, September 1974 (UK)
オープニングクレジット
日本
オリジナル版
名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / プリマス行き急行列車, THE PLYMOUTH EXPRESS / Dramatized by ROD BEACHAM / Script Consultant CLIVE EXTON
ハイビジョンリマスター版
名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / プリマス行き急行列車 // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / THE PLYMOUTH EXPRESS / Dramatized by ROD BEACHAM / Script Consultant CLIVE EXTON
エンディングクレジット
日本
オリジナル版
原作 アガサ・クリスティー 脚本 ロッド・ビーチャム 監督 アンドリュー・ピディントン 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞 ミス・レモン 翠 準子 ハリデイ 小林昭二 ジェーン 大方斐紗子 ロシュフォール 西沢利明 小林勝彦 勝生真沙子 江原正士 中原 茂 中村秀利 茶 風林 木藤聡子 / 日本語版 宇津木道子 山田悦司 福岡浩美 南部満治 金谷和美
ハイビジョンリマスター版
原作 アガサ・クリスティー 脚本 ロッド・ビーチャム クライブ・エクストン 演出 アンドリュー・ピディントン 制作 LWT (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬/安原 義人 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞 ミス・レモン(ポーリン・モラン) 翠 準子 ハリデイ 小林 昭二/糸 博 ジェーン 大方 斐紗子/二宮 弘子 ロシュフォール 西沢 利明/檀 臣幸 小林 勝彦 勝生 真沙子 江原 正士 中原 茂 中村 秀利 茶風林 木藤 聡子 吉野 貴宏 日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千
海外
オリジナル版
Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Captain Hastings: HUGH FRASER; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Miss Lemon: PAULINE MORAN; Halliday: JOHN STONE; McKenzie: KENNETH HAIGH; Rupert Carrington: JULIAN WADHAM; Comte de la Rochefour: ALFREDO MICHELSON; Jane Mason: MARION BAILEY; Florence Carrington: SHELAGH McLEOD; Newsboy: STEVEN MACKINTOSH; Bank Manager: LEON EAGLES; Detective: JOHN ABBOTT; Barman: STEVEN RIDDLE; Station Official: ADRIAN McLOUGHLIN; Reception Clerk: NIGEL MAKIN; Sergeant: RICHARD VANSTONE; Naval Officer: ROBERT LOCKE; Porter: DUNCAN FABER; Stunts: ROY ALON / Developed for Television by Carnival Films / (中略)Assistant Directors: SIMON HINKLY, ADAM GOODMAN, GILLY RADDINGS; Production Manager: KIERON PHIPPS; Production Co-ordinator: MONICA ROGERS; Accounts: JOHN BEHARRELL, PENELOPE FORRESTER; Locations: NIGEL GOSTELOW, SCOTT ROWLATT; Script Supervisor: SHEILA WILSON; Camera Operator: STEVEN ALCORN; Focus Puller: HUGH FAIRS; Clapper/Loader: RAY COOPER; Grip: JOHN ETHERINGTON; Boom Operator: MARTIN TREVIS; Sound Assistant: COLIN CODNER; Gaffer: JOHN HUMPHREY; Art Director: PETER WENHAM; Set Dresser: CARLOTTA BARROW; Production Buyer: LUDMILLA BARRAS; Property Master: MICKY LENNON; Construction Manager: LES PEACH; Wardrobe: JOHN SCOTT, KIRSTEN WING, VERNON WHITE, NIGEL EGERTON; Assistant Costume Designer: MICHAEL PRICE; Make up Artists: KATE BOWER, PATRICIA KIRKMAN; First Assistant Editor: DARYL JORDAN; Dubbing: PETER LENNARD, MIKE MURR, RUPERT SCRIVENER; Post Production Supervisor: DEREK BAIN; Panaflex 16(R) Camera by Panavision(R); Grip Equipment by Grip House Ltd; Lighting & Generators by Samuelson Lighting Ltd; Made at Twickenham Studios, London, England; Costume Designer: ROBIN FRASER PAYE; Make up Supervisor: JANIS GOULD; Sound Recordist: KEN WESTON; Titles: PAT GAVIN; Casting: REBECCA HOWARD; Production Supervisor: DONALD TOMS; Editor: JON COSTELLO / Production Designer: ROB HARRIS / Director of Photography: CHRIS O'DELL / Music: CHRISTOPHER GUNNING / Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN / Director: ANDREW PIDDINGTON
あらすじ
オーストラリア人大富豪ハリデイの我が子を思う気持ちに心を動かされたポワロは、その娘フロレンスにつきまとうロシュフォール伯爵なる人物の調査を始める。ところがその矢先、彼女はプリマス行き急行列車の車内で殺害されてしまう……
事件発生時期
某年2月中旬
主要登場人物
エルキュール・ポワロ | 私立探偵 |
アーサー・ヘイスティングス | ポワロの探偵事務所のパートナー、陸軍大尉 |
ジェームス・ジャップ | スコットランド・ヤード主任警部 |
フェリシティ・レモン | ポワロの秘書 |
ゴードン・ハリデイ | イエロークリーク鉱山会社会長、オーストラリア人 |
フロレンス・キャリントン | ハリデイの娘、愛称フロッシー |
ルパート・キャリントン | フロレンスの夫 |
ロシュフォール | 自称伯爵、フランス人 |
ジェーン・メイソン | フロレンスのメイド |
マッケンジー | 宝石泥棒 |
解説、みたいなもの
「名探偵ポワロ」初期作品にはめずらしく、殺人という犯罪の凶悪さとそれが生む悲劇を強調したエピソード。原作短篇は、クリスティーが1928年に発表した長篇「青列車の秘密」の原型でもある。
〈プリマス行き急行列車〉として撮影に使われたのは主に、実際にはサセックスを走るブルーベル鉄道で、ウェストン駅はそのホーステッド・ケインズ駅。ただし、それ以外のパディントン駅やブリストル駅、プリマス駅といった基幹駅の車外の場面はブルーベル鉄道ではなく、すべてヨークシャーのハル・パラゴン駅で撮影されており、似た景色(というか、同じ駅なので当然同じ景色)がつづく上、日本語音声では駅名が言及されなかったりもして、あらかじめ地理を把握していないと出来事の前後関係が混乱するかもしれない。事件の経緯と道程を簡単にまとめておくと、〈プリマス行き急行列車〉はロンドンのパディントン駅を出発し、そこから西へ進んでブリストル駅に停車。ブリストルは南西半島の付け根北部に位置する町で、当初フロレンスが乗り換える予定で、メイドのジェーンが待っていたのはここ。そこから汽車は南西半島の北側を進み、次の停車駅がウェストン駅で、フロレンスが新聞の遅版がほしいと騒いだとされるのがここ。その後、汽車は半島を横断し、トーントン駅(台詞で言及されるのみで劇中では映らない)を経て終点のプリマス駅に到着して、ここで遺体が発見された。このプリマスはイギリス南西部デヴォン州にある港町で、メイフラワー号の出港地として知られる。
[1]
前回の「100万ドル債券盗難事件」同様、原作と違って事件発生前からポワロが乗り出す。また、原作のポワロは捜査をジャップ警部に任せて現場には出向かず、関係者の話と〈灰色の脳細胞〉だけで事件を解決していたが、ドラマでは被害者が乗ったのと同じ汽車(車両は違うけれど)に乗って現場へ聞き込みに向かう。一方、ドラマのジャップ警部は代わりにロシュフォール伯爵を追う役割を割り振られ、キャリントンを追うヘイスティングスと対照されている。ポワロが関係者の言葉のみで実行犯の宝石泥棒の特徴を推理した原作のくだりがミス・レモンのファイルを調べるだけになったのは、ミス・レモンも含めたレギュラー陣全員に活躍どころを提供する意図だろうか。その他の細かい変更点としては、原作のハリデイはアメリカ人でファーストネームもイビニーザだったほか、マッケンジーもレッド・ナーキーという名前だった。
フロレンスがキャリントンにとった「裁判による別居 (legal separation)」とは、離婚はしないまま同居等の夫婦間の義務を法的に免れる決定のこと。現在も協議離婚が認められていないイギリスでは離婚にあたって裁判での承認が必要になり、1923年から1937年のあいだに認められた離婚事由は相手の不貞のみであった[2]。ハイビジョンリマスター版で番組内容として放送データに載っているあらすじには、ハリデイが娘夫婦を「離婚させるつもりだった」と書かれているが、裁判による別居を勝ち得た状況で彼は「何とかこの男〔キャリントン〕を片づけた」と言っており、ポワロへの依頼もロシュフォール伯爵に関わることなので、内心の希望はともかく、キャリントン側に離婚の意思も(裁判で認められる)落ち度もない状況で、さらに離婚まで持っていくつもりがあったかは微妙なところである。
金銭援助を断られたキャリントンがフロレンスに言う「君がそんなに冷たい女だとは思わなかった」という台詞は、原語だと 'I think you should help me out, Flossie. (君はぼくを助けるべきだと思うよ)' となっていて、彼に手段を選ばず金銭を手にする意思があるようにも感じられる表現になっている。
化粧台に向かうフロレンスが手にした手鏡に彼女の顔が映っているのが見えるが、それだと彼女からは自分の顔が見えないはずである。その状況では、実際には彼女から見た手鏡にはカメラが映っているはずで、もちろん演出として意図的にやっているのだろうけれど。
原語でルパート・キャリントンの名前に冠されている the Honourable とは、伯爵の次男以下の子息や、子爵・男爵の子につけられる敬称で、これによって彼が貴族の家柄であることがわかる(ただし、この敬称は高等法院の判事や下院議員などにも用いる)。しかし、日本語には対応する敬称がなく、またそのままカタカナ表記するにも馴染みが薄いためか、訳出されないことも多い。
フロレンスが「今月ロンドンでいちばんの見物」と言う「ドッグショー」こと クラフツ (Crufts) は、チャールズ・クラフトが1891年に始め、現在もつづく犬の品評会。劇中の正確な年は不明だが、1936年が舞台だとすれば、その年はゴールデン・ジュビリー(50周年)を5年早く記念しており、初めて1万頭を超えるエントリーがあったという。[3]当時のクラフツの開催は2月前半なので、劇中は2月初めということになるが、撮影時期は1990年の夏と見られ、2月のイギリスにしては木々の葉が蒼々としている。また、ロシュフォール伯爵がイエロークリーク鉱山会社株の取引をしている際、デスク上のカレンダーは16日を指している。
フロレンスが〈プリマス行き急行列車〉に乗車する際、1番線と2番線は右側のプラットフォームである旨の案内板が下がっているが、そのすぐ奥には、そこが1番線であることを示すと思われる「1」という表示が下がっている。また、駅の構内放送でも〈プリマス行き急行列車〉が停まっている線を1番線と言う。さらに、その前にフロレンスが通りすぎる駅の掲示板の上に設置された案内では、フロレンスの向かう先は PLATFORM 4 (4番線) と書かれている。
〈プリマス行き急行列車〉に乗るフロレンスがかぶっている帽子は、「ダベンハイム失そう事件」でダベンハイム夫人が警察署を訪れた際にかぶっていた帽子や、「あなたの庭はどんな庭?」で、カトリーナがロシア正教会などでかぶっていた帽子の色ちがいである。
パディントン駅のスタンドで売られていた Daily Mail や Radio Pictorial など(Radio Pictorial は車中でフロレンスも読んでいる)は実在の新聞あるいは雑誌で、ほかの商品もすべて実在のものか。また、ミス・レモンが取りそろえた Daily Sketch, Daily Mirror, Evening Standard, The Daily Telegraph, The Evening News も全部実在の新聞。ヘイスティングスが調査と関係なく読んでいる The Times と The Sporting Life も同様。
〈プリマス行き急行列車〉がプリマス駅に到着する場面では、画面奥の線に、側面に赤色灯が点灯した現代の車両が停まっているのが見える。また、一等車の通廊は進行方向左側にあり、プリマス駅ではプラットフォームが同右側に来るように入線したはずだが、車内に場面が移ると乗車口が通廊側に変わり、窓の外に見える景色も変わる。
フロレンスの遺体発見直前、ポーターが「トランクは下にお入れします」と言いながら最初の鞄を網棚に載せるが、原語は 'Going on to Penzance, are you, sir? (ペンザンスへいらっしゃるんですか?)' とぜんぜん別の台詞である。しかし、ペンザンスはプリマスからさらに西の、南西半島先端に近いコーンワルの港町で、そこへ行こうとする人間が、終点に到着してロンドンへ折り返すと見られる〈プリマス行き急行列車〉に乗り込むのは不自然に思われる。なお、原作だと、フロレンスの遺体を発見する海軍士官は、トーントンとプリマスのあいだにあるニュートン・アボットから、海軍基地のあるプリマスへ向けて乗車していた。
フロレンスの遺体発見時、ニュースを伝送するモールス信号のような電信音が聞こえるが、日本語音声と原語音声でなぜか音色やパターンが異なる。なお、それぞれをモールス符号として解釈しようとすると、日本語音声はそもそも復号できるパターンになっていない。また、原語音声も文字間が適切に分割されておらず、それを無視して強引に復号しても意味のある言葉にならない。
フロレンスの宝石ケースの材質は「青いモロッコ革」と表現されるが、内張りはともかく、外側はかろうじてブルーグレーと言えなくもない色合いで、ほぼ青くない。この「青いモロッコ革」という設定は原作そのままなのだが、台詞での言及時にはケースがその場になく、用意された小道具との齟齬に誰も気づかなかったのだろう。
ハイビジョンリマスター版で、ポワロが「列車に乗って西のほうへ行ってみませんか?」と提案した際の「西のほう」に対応する原語 West Country は、特にイングランド南西部を指す言葉である。
ポワロとヘイスティングスが〈プリマス行き急行列車〉でウェストンへ向かう際、線路脇の家の屋根にテレビのアンテナが見える。
ウェストン駅でホームに降りたポワロが新聞売りの少年を目にとめた際、茶色の地のワンピースを着た女性が新聞売りの横を通り抜けていくが、そのあと同じ女性が新聞売りよりポワロ寄りの場所で列車から子供を降ろしている。またこの子供連れの女性と、青と黄色の花柄のワンピースを着た女性が、列車から降りたあと、特にホームで用事をこなしたふうもなく、進行方向後ろの車両にふたたび乗り込んでいるのは、「ぶらぶら歩いて外の空気を吸った」だけで気が済んだのだろうか。
ルパート・キャリントンがノミ屋から身を隠していた「酒場」は、ポワロの言葉の原語によれば、彼の所属する紳士クラブ。したがって、そこが「ノミ屋に見つからない唯一の場所」(原語では「ノミ屋につかまらない唯一の場所」のニュアンス)なのは、単に場所を知られていないというより、ノミ屋は入れてもらえない場所だからである。
ロシュフォール伯爵の無記名債券の出所は、ホテルで伯爵がフロレンスにした話ではパリのファースト・ナショナル銀行ということだったのに、警察でのジャップ警部とハリデイの話になると、なぜかインターナショナル銀行という名前に変わっている。また、その債券は額面2万ポンドとのことだが、ハイビジョンリマスター版で見られる債券1枚あたりの額面は、フランスの銀行の所有らしく CINQ CENTS FRANCS (500フラン)。2万ポンドとは、為替にしたがって換算した額だろうか。そして、ジャップ警部が指し示す「イエロークリーク ストップ高」という新聞記事の本文は、なぜかオートバイのレースで入賞を志す人へ支援を表明した内容である。
ポワロとヘイスティングス、ジャップ警部が犯人について議論する警察署の廊下では蛍光灯らしき照明が見えるが、蛍光灯の商業生産が始まったのは1937年のことで、劇中の正確な年は不明ながら、おそらくわずかに時代に合わない。
マッケンジーの家に警察が踏み込むのを見届けたあと、ポワロが「行きましょう」と言うのは日本語のみの台詞である。
ポワロの謎解きが始まる前、両手でトレイを運んできたジェーンがドアを体で開ける際、ガチャッというラッチボルトの動いたような音がするが、ラッチボルトがはまっていたのなら取っ手をまわさずにドアを開けることはできないのではないかしら。ヘイスティングスが気づいて内側から開けてやったのだとしても、ヘイスティングスの持っていた取っ手はラッチボルトを動かすタイプには見えない。一方、そのドアが閉じる際には、なぜかラッチボルトのはまる音がしない。
オリジナル版ではブリストル駅の場面で「ブリストル」と表示されていた字幕が、ハイビジョンリマスター版では「ブリストル駅」に変更されている。
冒頭のフロレンスとキャリントンを残してハリデイが部屋へ引き取るカットや、フロレンスとロシュフォール伯爵がお茶を飲んでいたホテルのレストランの様子を映した場面では、画面左下に糸のようなものが写ってしまっている。
ハリデイ親子が住むデュ・ケイン・コートは南ロンドンのバラムに実在する大型マンションだが、ハリデイ親子の部屋はサリー州チャートシーにあるセント・アンズ・コートという戸建ての住宅で撮影されている。玄関の横にマンション内部とは思えないひらけた窓があったり、フロレンスの部屋の窓の外にマンションの上階から見ているとは思えない高さの木があったりするのもそのためで、玄関外の廊下の壁は撮影のために設えられたセット。ジェーンが玄関のドアを開けた際、ドアの敷居に不自然な方向から強い光が差しているのも、セットの隙間から陽光が差し込んでしまったものと思われる。このセント・アンズ・コートは、「誘拐された総理大臣」でもやはり、ダニエルズ中佐の住むマンションの屋内として撮影に使われていた。一方、ロシュフォール伯爵が滞在したアデルフィ・ホテルの建物は、チャリング・クロス駅近くのジョン・アダム・ストリートにあるアデルフィ・ビルディング。マッケンジーの家があるのはそこからすこし東の、ローマ浴場跡で知られるストランド・レーンで、家の手前にある柵には、さすがに内容は読めないものの観光客向けの案内板がそのまま見える。前述のブルーベル鉄道やホーステッド・ケインズ駅は、「コックを捜せ」(車内のみ)や「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」、「スタイルズ荘の怪事件」、「西洋の星の盗難事件」(駅は元ケッチズ・ホールト駅)でも撮影に使われている。遺体安置所は、「あなたの庭はどんな庭?」と同じ場所らしく見えるが壁の下側に色が塗られており、同じセットを手直しして使用していると思われる。
ロシュフォール伯爵とフロレンスが会ったホテルのレストランでかかっていた曲は、ショパンのノクターン第9番ロ長調(作品32-1)およびワルツ第7番嬰ハ短調(作品64-2)。
ルパート・キャリントン役のジュリアン・ウェイダムは、ジェラルディン・マクイーワン主演の「ミス・マープル」の一篇、「スリーピング・マーダー」でケルビン・ハリデイ役を演じているほか、ジョン・ネトルズ主演の「バーナビー警部」の一篇、「少年時代は秘密のベール」にもサイモン・フレッチャー役で出演。
ハイビジョンリマスター版2K放送の切換式字幕ではこれまで、ポワロの台詞を黄色で、ジャップ警部かヘイスティングスのいずれか片方の台詞を水色で表示し、他方の台詞はほかのキャラクターと同じ白色で表示していたが、本作からジャップ警部の台詞を水色、ヘイスティングスの台詞を緑色で表示するようになった(ジャップ警部の出演がない場合、これまでどおりヘイスティングスの台詞は水色で表示される)。しかし、4K放送では、ヘイスティングスの台詞は引きつづき白色で表示される。ただし、本作の謎解きの最中に警部が「『ある程度』?」と聞き返すところは、なぜかいずれも白色で表示される。
本篇とは関係ないが、下で紹介している DVD やインターネット上のサイトではしばしば、本作品のものでない画像が本作品の一場面として紹介されている。取り違えられるのはいつも、ロサコフ伯爵夫人が写った「二重の手がかり」のラストシーンと思われる複数の画像だが、放送された作品にまったく同じカットは存在せず、未公開カットか宣伝用のスチル写真のようだ。
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ブリストル駅でジェーンがマッケンジーに時計が合っているか確認する場面は、二人に接点があったことを示す伏線として挿入されたと思われるが、マッケンジーは〈プリマス行き急行列車〉がブリストルに到着する前にフロレンス殺害を済ませてブリストルで下車している一方、ジェーンはその先のウェストンでフロレンスのふりをして新聞を求めたあと、おそらくは次のトーントンで下車してブリストルへ引き返してきたと見られ、マッケンジーがそれまでブリストルで待ち、その後も一緒にいた理由がよくわからない。
謎解きのなかでヘイスティングスが「医者は殺害時刻はウェストン到着前だと言っているんです。あるいはブリストル到着前だと」と言い出すが、ハイビジョンリマスター版では、死体置き場を出たあとにジャップ警部とヘイスティングスのあいだで「死亡推定時刻はいちばん遅く見て列車がウェストンを出た直後ですが、その直前の可能性も」「ウェストンに着く前ということも?」「ありうる」という会話が交わされており、ウェストン到着後の可能性を否定もしていなければ、ブリストル到着前の可能性にもまったく言及していない。ただし、原語だとウェストンの出発「直」前に限定するニュアンスはなく、ブリストル到着前については、確かにウェストン到着前ではある。また、オリジナル版だとその会話の場面はカットされて見られないが、殺害時刻がウェストン到着前だと聞いていたのだとしたら、それに触れずにウェストンでフロレンスの行動の調査をしたのはやはりおかしい。加えて、ブリストル出発が2時50分なのに、それより前であるフロレンス殺害時、2月初めにしては太陽が傾きすぎているように思われる(オリジナル版だと太陽は見えないが、車内へ射し込む光の向きから、太陽の位置が低いことはわかる)。
〈プリマス行き急行列車〉として撮影に使われたのは主に、実際にはサセックスを走るブルーベル鉄道で、ウェストン駅はそのホーステッド・ケインズ駅。ただし、それ以外のパディントン駅やブリストル駅、プリマス駅といった基幹駅の車外の場面はブルーベル鉄道ではなく、すべてヨークシャーのハル・パラゴン駅で撮影されており、似た景色(というか、同じ駅なので当然同じ景色)がつづく上、日本語音声では駅名が言及されなかったりもして、あらかじめ地理を把握していないと出来事の前後関係が混乱するかもしれない。事件の経緯と道程を簡単にまとめておくと、〈プリマス行き急行列車〉はロンドンのパディントン駅を出発し、そこから西へ進んでブリストル駅に停車。ブリストルは南西半島の付け根北部に位置する町で、当初フロレンスが乗り換える予定で、メイドのジェーンが待っていたのはここ。そこから汽車は南西半島の北側を進み、次の停車駅がウェストン駅で、フロレンスが新聞の遅版がほしいと騒いだとされるのがここ。その後、汽車は半島を横断し、トーントン駅(台詞で言及されるのみで劇中では映らない)を経て終点のプリマス駅に到着して、ここで遺体が発見された。このプリマスはイギリス南西部デヴォン州にある港町で、メイフラワー号の出港地として知られる。
フロレンスがキャリントンにとった「裁判による別居 (legal separation)」とは、離婚はしないまま同居等の夫婦間の義務を法的に免れる決定のこと。現在も協議離婚が認められていないイギリスでは離婚にあたって裁判での承認が必要になり、1923年から1937年のあいだに認められた離婚事由は相手の不貞のみであった[2]。ハイビジョンリマスター版で番組内容として放送データに載っているあらすじには、ハリデイが娘夫婦を「離婚させるつもりだった」と書かれているが、裁判による別居を勝ち得た状況で彼は「何とかこの男〔キャリントン〕を片づけた」と言っており、ポワロへの依頼もロシュフォール伯爵に関わることなので、内心の希望はともかく、キャリントン側に離婚の意思も(裁判で認められる)落ち度もない状況で、さらに離婚まで持っていくつもりがあったかは微妙なところである。
金銭援助を断られたキャリントンがフロレンスに言う「君がそんなに冷たい女だとは思わなかった」という台詞は、原語だと 'I think you should help me out, Flossie. (君はぼくを助けるべきだと思うよ)' となっていて、彼に手段を選ばず金銭を手にする意思があるようにも感じられる表現になっている。
化粧台に向かうフロレンスが手にした手鏡に彼女の顔が映っているのが見えるが、それだと彼女からは自分の顔が見えないはずである。その状況では、実際には彼女から見た手鏡にはカメラが映っているはずで、もちろん演出として意図的にやっているのだろうけれど。
原語でルパート・キャリントンの名前に冠されている the Honourable とは、伯爵の次男以下の子息や、子爵・男爵の子につけられる敬称で、これによって彼が貴族の家柄であることがわかる(ただし、この敬称は高等法院の判事や下院議員などにも用いる)。しかし、日本語には対応する敬称がなく、またそのままカタカナ表記するにも馴染みが薄いためか、訳出されないことも多い。
フロレンスが「今月ロンドンでいちばんの見物」と言う「ドッグショー」こと クラフツ (Crufts) は、チャールズ・クラフトが1891年に始め、現在もつづく犬の品評会。劇中の正確な年は不明だが、1936年が舞台だとすれば、その年はゴールデン・ジュビリー(50周年)を5年早く記念しており、初めて1万頭を超えるエントリーがあったという。[3]当時のクラフツの開催は2月前半なので、劇中は2月初めということになるが、撮影時期は1990年の夏と見られ、2月のイギリスにしては木々の葉が蒼々としている。また、ロシュフォール伯爵がイエロークリーク鉱山会社株の取引をしている際、デスク上のカレンダーは16日を指している。
フロレンスが〈プリマス行き急行列車〉に乗車する際、1番線と2番線は右側のプラットフォームである旨の案内板が下がっているが、そのすぐ奥には、そこが1番線であることを示すと思われる「1」という表示が下がっている。また、駅の構内放送でも〈プリマス行き急行列車〉が停まっている線を1番線と言う。さらに、その前にフロレンスが通りすぎる駅の掲示板の上に設置された案内では、フロレンスの向かう先は PLATFORM 4 (4番線) と書かれている。
〈プリマス行き急行列車〉に乗るフロレンスがかぶっている帽子は、「ダベンハイム失そう事件」でダベンハイム夫人が警察署を訪れた際にかぶっていた帽子や、「あなたの庭はどんな庭?」で、カトリーナがロシア正教会などでかぶっていた帽子の色ちがいである。
パディントン駅のスタンドで売られていた Daily Mail や Radio Pictorial など(Radio Pictorial は車中でフロレンスも読んでいる)は実在の新聞あるいは雑誌で、ほかの商品もすべて実在のものか。また、ミス・レモンが取りそろえた Daily Sketch, Daily Mirror, Evening Standard, The Daily Telegraph, The Evening News も全部実在の新聞。ヘイスティングスが調査と関係なく読んでいる The Times と The Sporting Life も同様。
〈プリマス行き急行列車〉がプリマス駅に到着する場面では、画面奥の線に、側面に赤色灯が点灯した現代の車両が停まっているのが見える。また、一等車の通廊は進行方向左側にあり、プリマス駅ではプラットフォームが同右側に来るように入線したはずだが、車内に場面が移ると乗車口が通廊側に変わり、窓の外に見える景色も変わる。
フロレンスの遺体発見直前、ポーターが「トランクは下にお入れします」と言いながら最初の鞄を網棚に載せるが、原語は 'Going on to Penzance, are you, sir? (ペンザンスへいらっしゃるんですか?)' とぜんぜん別の台詞である。しかし、ペンザンスはプリマスからさらに西の、南西半島先端に近いコーンワルの港町で、そこへ行こうとする人間が、終点に到着してロンドンへ折り返すと見られる〈プリマス行き急行列車〉に乗り込むのは不自然に思われる。なお、原作だと、フロレンスの遺体を発見する海軍士官は、トーントンとプリマスのあいだにあるニュートン・アボットから、海軍基地のあるプリマスへ向けて乗車していた。
フロレンスの遺体発見時、ニュースを伝送するモールス信号のような電信音が聞こえるが、日本語音声と原語音声でなぜか音色やパターンが異なる。なお、それぞれをモールス符号として解釈しようとすると、日本語音声はそもそも復号できるパターンになっていない。また、原語音声も文字間が適切に分割されておらず、それを無視して強引に復号しても意味のある言葉にならない。
フロレンスの宝石ケースの材質は「青いモロッコ革」と表現されるが、内張りはともかく、外側はかろうじてブルーグレーと言えなくもない色合いで、ほぼ青くない。この「青いモロッコ革」という設定は原作そのままなのだが、台詞での言及時にはケースがその場になく、用意された小道具との齟齬に誰も気づかなかったのだろう。
ハイビジョンリマスター版で、ポワロが「列車に乗って西のほうへ行ってみませんか?」と提案した際の「西のほう」に対応する原語 West Country は、特にイングランド南西部を指す言葉である。
ポワロとヘイスティングスが〈プリマス行き急行列車〉でウェストンへ向かう際、線路脇の家の屋根にテレビのアンテナが見える。
ウェストン駅でホームに降りたポワロが新聞売りの少年を目にとめた際、茶色の地のワンピースを着た女性が新聞売りの横を通り抜けていくが、そのあと同じ女性が新聞売りよりポワロ寄りの場所で列車から子供を降ろしている。またこの子供連れの女性と、青と黄色の花柄のワンピースを着た女性が、列車から降りたあと、特にホームで用事をこなしたふうもなく、進行方向後ろの車両にふたたび乗り込んでいるのは、「ぶらぶら歩いて外の空気を吸った」だけで気が済んだのだろうか。
ルパート・キャリントンがノミ屋から身を隠していた「酒場」は、ポワロの言葉の原語によれば、彼の所属する紳士クラブ。したがって、そこが「ノミ屋に見つからない唯一の場所」(原語では「ノミ屋につかまらない唯一の場所」のニュアンス)なのは、単に場所を知られていないというより、ノミ屋は入れてもらえない場所だからである。
ロシュフォール伯爵の無記名債券の出所は、ホテルで伯爵がフロレンスにした話ではパリのファースト・ナショナル銀行ということだったのに、警察でのジャップ警部とハリデイの話になると、なぜかインターナショナル銀行という名前に変わっている。また、その債券は額面2万ポンドとのことだが、ハイビジョンリマスター版で見られる債券1枚あたりの額面は、フランスの銀行の所有らしく CINQ CENTS FRANCS (500フラン)。2万ポンドとは、為替にしたがって換算した額だろうか。そして、ジャップ警部が指し示す「イエロークリーク ストップ高」という新聞記事の本文は、なぜかオートバイのレースで入賞を志す人へ支援を表明した内容である。
ポワロとヘイスティングス、ジャップ警部が犯人について議論する警察署の廊下では蛍光灯らしき照明が見えるが、蛍光灯の商業生産が始まったのは1937年のことで、劇中の正確な年は不明ながら、おそらくわずかに時代に合わない。
マッケンジーの家に警察が踏み込むのを見届けたあと、ポワロが「行きましょう」と言うのは日本語のみの台詞である。
ポワロの謎解きが始まる前、両手でトレイを運んできたジェーンがドアを体で開ける際、ガチャッというラッチボルトの動いたような音がするが、ラッチボルトがはまっていたのなら取っ手をまわさずにドアを開けることはできないのではないかしら。ヘイスティングスが気づいて内側から開けてやったのだとしても、ヘイスティングスの持っていた取っ手はラッチボルトを動かすタイプには見えない。一方、そのドアが閉じる際には、なぜかラッチボルトのはまる音がしない。
オリジナル版ではブリストル駅の場面で「ブリストル」と表示されていた字幕が、ハイビジョンリマスター版では「ブリストル駅」に変更されている。
冒頭のフロレンスとキャリントンを残してハリデイが部屋へ引き取るカットや、フロレンスとロシュフォール伯爵がお茶を飲んでいたホテルのレストランの様子を映した場面では、画面左下に糸のようなものが写ってしまっている。
ハリデイ親子が住むデュ・ケイン・コートは南ロンドンのバラムに実在する大型マンションだが、ハリデイ親子の部屋はサリー州チャートシーにあるセント・アンズ・コートという戸建ての住宅で撮影されている。玄関の横にマンション内部とは思えないひらけた窓があったり、フロレンスの部屋の窓の外にマンションの上階から見ているとは思えない高さの木があったりするのもそのためで、玄関外の廊下の壁は撮影のために設えられたセット。ジェーンが玄関のドアを開けた際、ドアの敷居に不自然な方向から強い光が差しているのも、セットの隙間から陽光が差し込んでしまったものと思われる。このセント・アンズ・コートは、「誘拐された総理大臣」でもやはり、ダニエルズ中佐の住むマンションの屋内として撮影に使われていた。一方、ロシュフォール伯爵が滞在したアデルフィ・ホテルの建物は、チャリング・クロス駅近くのジョン・アダム・ストリートにあるアデルフィ・ビルディング。マッケンジーの家があるのはそこからすこし東の、ローマ浴場跡で知られるストランド・レーンで、家の手前にある柵には、さすがに内容は読めないものの観光客向けの案内板がそのまま見える。前述のブルーベル鉄道やホーステッド・ケインズ駅は、「コックを捜せ」(車内のみ)や「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」、「スタイルズ荘の怪事件」、「西洋の星の盗難事件」(駅は元ケッチズ・ホールト駅)でも撮影に使われている。遺体安置所は、「あなたの庭はどんな庭?」と同じ場所らしく見えるが壁の下側に色が塗られており、同じセットを手直しして使用していると思われる。
ロシュフォール伯爵とフロレンスが会ったホテルのレストランでかかっていた曲は、ショパンのノクターン第9番ロ長調(作品32-1)およびワルツ第7番嬰ハ短調(作品64-2)。
ルパート・キャリントン役のジュリアン・ウェイダムは、ジェラルディン・マクイーワン主演の「ミス・マープル」の一篇、「スリーピング・マーダー」でケルビン・ハリデイ役を演じているほか、ジョン・ネトルズ主演の「バーナビー警部」の一篇、「少年時代は秘密のベール」にもサイモン・フレッチャー役で出演。
ハイビジョンリマスター版2K放送の切換式字幕ではこれまで、ポワロの台詞を黄色で、ジャップ警部かヘイスティングスのいずれか片方の台詞を水色で表示し、他方の台詞はほかのキャラクターと同じ白色で表示していたが、本作からジャップ警部の台詞を水色、ヘイスティングスの台詞を緑色で表示するようになった(ジャップ警部の出演がない場合、これまでどおりヘイスティングスの台詞は水色で表示される)。しかし、4K放送では、ヘイスティングスの台詞は引きつづき白色で表示される。ただし、本作の謎解きの最中に警部が「『ある程度』?」と聞き返すところは、なぜかいずれも白色で表示される。
本篇とは関係ないが、下で紹介している DVD やインターネット上のサイトではしばしば、本作品のものでない画像が本作品の一場面として紹介されている。取り違えられるのはいつも、ロサコフ伯爵夫人が写った「二重の手がかり」のラストシーンと思われる複数の画像だが、放送された作品にまったく同じカットは存在せず、未公開カットか宣伝用のスチル写真のようだ。
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ブリストル駅でジェーンがマッケンジーに時計が合っているか確認する場面は、二人に接点があったことを示す伏線として挿入されたと思われるが、マッケンジーは〈プリマス行き急行列車〉がブリストルに到着する前にフロレンス殺害を済ませてブリストルで下車している一方、ジェーンはその先のウェストンでフロレンスのふりをして新聞を求めたあと、おそらくは次のトーントンで下車してブリストルへ引き返してきたと見られ、マッケンジーがそれまでブリストルで待ち、その後も一緒にいた理由がよくわからない。
謎解きのなかでヘイスティングスが「医者は殺害時刻はウェストン到着前だと言っているんです。あるいはブリストル到着前だと」と言い出すが、ハイビジョンリマスター版では、死体置き場を出たあとにジャップ警部とヘイスティングスのあいだで「死亡推定時刻はいちばん遅く見て列車がウェストンを出た直後ですが、その直前の可能性も」「ウェストンに着く前ということも?」「ありうる」という会話が交わされており、ウェストン到着後の可能性を否定もしていなければ、ブリストル到着前の可能性にもまったく言及していない。ただし、原語だとウェストンの出発「直」前に限定するニュアンスはなく、ブリストル到着前については、確かにウェストン到着前ではある。また、オリジナル版だとその会話の場面はカットされて見られないが、殺害時刻がウェストン到着前だと聞いていたのだとしたら、それに触れずにウェストンでフロレンスの行動の調査をしたのはやはりおかしい。加えて、ブリストル出発が2時50分なのに、それより前であるフロレンス殺害時、2月初めにしては太陽が傾きすぎているように思われる(オリジナル版だと太陽は見えないが、車内へ射し込む光の向きから、太陽の位置が低いことはわかる)。
- [1] GWR map.jpg を参考に、 United Kingdom location map.svg (NordNordWest, Richardguk, Palosirkka) を CC BY-SA 3.0 のもと筆者改変
- [2] Divorce since 1900 - UK Parliament
- [3] Crufts: History of Crufts
ロケ地写真
カットされた場面
日本
オリジナル版
[18:30/0:51] | フロレンスの訃報に接してのハリデイとポワロの会話 |
[21:28/0:33] | 死体置き場を出たあとの殺害時刻に関する会話 〜 線路を駈ける汽車 〜 炉にくべられる石炭 |
[27:09/1:43] | バーでのヘイスティングスとキャリントンの会話の後半 〜 ハリデイが来る前のロシュフォール伯爵の取り調べ場面 |
[28:57/0:29] | 警察でヘイスティングスとジャップ警部がポワロに自説をまくし立てる場面 |
[30:11/0:36] | ポワロ、ヘイスティングス、ジャップ警部がマッケンジーの家へ向かう場面 |
[34:36/0:47] | 謎解きの前のキャリントンとハリデイの会話 |
[38:05/0:16] | 窓にくずおれるフロレンス |
ハイビジョンリマスター版
なし映像ソフト
- [VHS, VCD] 「名探偵エルキュール・ポアロ 第2巻 プリマス行き急行列車」(字幕) 日本クラウン
- [DVD] 「名探偵ポワロ 13 プリマス行き急行列車, スズメバチの巣」(字幕・吹替) ビームエンタテインメント(現ハピネット・ピクチャーズ)※1
- [DVD] 「名探偵ポワロ [完全版] 13 プリマス行き急行列車, スズメバチの巣」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ※2
- [DVD] 「名探偵ポワロ DVDコレクション 46 プリマス行き急行列車」(字幕・吹替) デアゴスティーニ・ジャパン※3
- [BD] 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX Disc 7 プリマス行き急行列車, スズメバチの巣, マースドン荘の惨劇, 二重の手がかり」(字幕/吹替) ハピネット・ピクチャーズ※4
- ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX2」にも収録
- ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX1」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 4」にも収録
- ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
- ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 1」に収録
同原作の映像化作品
- [アニメ] 「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル 第25話〜第26話 プリマス行き急行列車」 2005年 監督:高橋ナオヒト 出演:里見浩太朗、折笠富美子、野島裕史、屋良有作、田中敦子