100万ドル債券盗難事件 The Million Dollar Bond Robbery
放送履歴
日本
オリジナル版(44分00秒)
- 1991年09月15日 23時00分〜 (NHK総合)
- 1992年05月07日 17時05分〜 (NHK総合)
- 1994年03月09日 17時05分〜 (NHK総合)
- 1998年11月26日 15時10分〜 (NHK総合)
- 2003年06月26日 18時00分〜 (NHK衛星第2)
ハイビジョンリマスター版(50分30秒)
- 2016年03月26日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
- 2016年08月31日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)
- 2020年08月29日 17時09分〜 (NHK BSプレミアム)※
- 2021年11月08日 09時00分〜 (NHK BS4K)
- 2022年11月02日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)
- ※ エンディング最後の画面下部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
海外
- 1991年01月13日 (英・ITV)
原作
邦訳
- 「百万ドル債券盗難事件」 - 『ポアロ登場』 クリスティー文庫 真崎義博訳
- 「百万ドル債券盗難事件」 - 『ポアロ登場』 ハヤカワミステリ文庫 小倉多加志訳
- 「百万ドル公債の盗難」 - 『ポワロの事件簿1』 創元推理文庫 厚木淳訳
- 「百万ドル公債の盗難」 - 『クリスティ短編集2』 新潮文庫 井上宗次・石田英二訳
原書
雑誌等掲載
- The Million Dollar Bond Robbery, The Sketch, 2 May 1923 (UK)
- The Million Dollar Bond Robbery, The Blue Book Magazine, April 1924 (USA)
短篇集
- The Million Dollar Bond Robbery, Poirot Investigates, The Bodley Head, 21 March 1924 (UK)
- The Million Dollar Bond Robbery, Poirot Investigates, Dodd Mead, 1925 (USA)
オープニングクレジット
日本
オリジナル版
名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // HUGH FRASER / PAULINE MORAN / 100万ドル債券盗難事件, THE MILLION DOLLAR BOND ROBBERY / Dramatized by ANTHONY HOROWITZ / Script Consultant CLIVE EXTON
ハイビジョンリマスター版
名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / 100万ドル債券盗難事件 // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / THE MILLION DOLLAR BOND ROBBERY / Dramatized by ANTHONY HOROWITZ / Script Consultant CLIVE EXTON
エンディングクレジット
日本
オリジナル版
原作 アガサ・クリスティー 脚本 アンソニー・ホロウィッツ 監督 アンドリュー・グリーブ 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬 ミス・レモン 翠 準子 ロング(ミランダ) 一柳みる ババソア 富田耕生 大塚芳忠 土井美加 阪 脩 大木民夫 北村弘一 上田敏也 津田英三 伊藤惣一 / 日本語版 宇津木道子 山田悦司 福岡浩美 南部満治 金谷和美
ハイビジョンリマスター版
原作 アガサ・クリスティー 脚本 アンソニー・ホロヴィッツ クライブ・エクストン 演出 アンドリュー・グリーブ 制作 LWT (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬/安原 義人 ミス・レモン(ポーリン・モラン) 翠 準子 ロング(ミランダ) 一柳 みる ババソア 富田 耕生 大塚 芳忠 土井 美加 阪 脩 大木 民夫 北村 弘一 上田 敏也 津田 英三 伊藤 惣一 廣田 行生 深水 由美 日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千
海外
オリジナル版
Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Captain Hastings: HUGH FRASER; Miss Lemon: PAULINE MORAN; Mr. Shaw: DAVID QUILTER; Mr. Vavasour: EWAN HOOPER; Mr. McNeil: PAUL YOUNG; Nurse Long & Miranda Brooks: LIZZY McINNERNY; Philip Ridgeway: OLIVER PARKER; Esmee Dalgleish: NATALIE OGLE; Chief Purser: CHRISTOPHER OWEN; Spivvy Passenger: JONATHAN STRATT; Hood: DALLAS ADAMS; Tom Franklin: KEIRON JECCHINIS; Flower Seller: EDWARD PHILLIPS; Police Officer: ROBIN HUNTER; Newsreader: RICHARD BEBB; Stunts: ANDY BRADFORD, COLIN SKEAPING / Developed for Television by Carnival Films / (中略)Assistant Directors: SIMON HINKLY, ADAM GOODMAN, GILLY RADDINGS; Production Manager: KIERON PHIPPS; Production Co-ordinator: MONICA ROGERS; Accounts: JOHN BEHARRELL, PENELOPE FORRESTER; Locations: NIGEL GOSTELOW, SCOTT ROWLATT; Script Supervisor: SHEILA WILSON; Camera Operator: STEVEN ALCORN; Focus Puller: HUGH FAIRS; Clapper/Loader: RAY COOPER; Grip: JOHN ETHERINGTON; Boom Operator: MARTIN TREVIS; Sound Assistant: RICHIE FINNEY; Gaffer: JOHN HUMPHREY; Art Director: PETER WENHAM; Set Dresser: CARLOTTA BARROW; Production Buyer: LUDMILLA BARRAS; Property Master: MICKY LENNON; Construction Manager: LES PEACH; Wardrobe: JOHN SCOTT, KIRSTEN WING, VERNON WHITE, NIGEL EGERTON; Assistant Costume Designer: MICHAEL PRICE; Make up Artists: KATE BOWER, PATRICIA KIRKMAN; First Assistant Editor: ANDREW McCLELLAND; Dubbing: PETER LENNARD, MIKE MURR, RUPERT SCRIVENER; Panaflex 16(R) Camera by Panavision(R); Grip Equipment by Grip House Ltd; Lighting & Generators by Samuelson Lighting Ltd; Made at Twickenham Studios, London, England; Costume Designer: ROBIN FRASER PAYE; Make up Supervisor: JANIS GOULD; Sound Recordist: PETER GLOSSOP; Titles: PAT GAVIN; Casting: REBECCA HOWARD; Production Supervisor: DONALD TOMS; Supervising Editor: DEREK BAIN / Production Designer: ROB HARRIS / Director of Photography: CHRIS O'DELL / Music: CHRISTOPHER GUNNING / Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN / Director: ANDREW GRIEVE
あらすじ
ロンドン・スコティッシュ銀行は100万ドル相当の自由公債をアメリカに移送する計画を立てた。ところが、移送を前にショー部長が狙われるなど不穏な雰囲気があり、ポワロに相談を持ちかける。そこでポワロもクイーン・メリー号に乗り込んで移送に同行するが……
事件発生時期
1936年5月下旬 〜 6月中旬
主要登場人物
エルキュール・ポワロ | 私立探偵 |
アーサー・ヘイスティングス | ポワロの探偵事務所のパートナー、陸軍大尉 |
フェリシティ・レモン | ポワロの秘書 |
ババソア | ロンドン・スコティッシュ銀行部長 |
ショー | ロンドン・スコティッシュ銀行部長 |
エズミー・ダルリーシュ | ババソア部長の秘書 |
フィリップ・リッジウェイ | ショー部長の部下、エズミーの婚約者 |
P・マクニール | ロンドン・スコティッシュ銀行警備責任者 |
ミランダ・ブルックス | クイーン・メリー号船客 |
解説、みたいなもの
「バーナビー警部」や「刑事フォイル」などのテレビドラマ脚本、「女王陛下の少年スパイ!アレックス」シリーズなどの児童文学、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズやイアン・フレミングの「007」シリーズの公式続篇、クリスティー作品へのオマージュにあふれた『カササギ殺人事件』や自身がワトスン役として作中に登場する『メインテーマは殺人』といったオリジナルミステリ小説など、幅広い執筆活動で知られるアンソニー・ホロウィッツの「名探偵ポワロ」脚本初担当エピソード。ホロウィッツはこのあと「名探偵ポワロ」の主要脚本家の一人となり、約10年にわたって長短篇合計11作品の脚本を手がける。なお、まったくの余談ながら、ホロウィッツが生まれるときに彼を取り上げたのは、当時ハーレー街で産科医をしていたデビッド・スーシェの父親だという[1]。
原作では事件発生後にエズミーから依頼を受けてポワロが解決に乗り出す筋書きだったが、ドラマではババソア部長の依頼で事件発生前からポワロが関わり、債券移送にも同行する。また、エズミーがババソアの秘書になって名字もファーカーからダルリーシュ(原語は Dalgleish だが、なぜか日本語では g を発音しない)に変更されていたり、リッジウェイがババソアの甥でなくなってギャンブル好きに変更されていたり、原作では「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」も担当していたマクニール警部が銀行の警備責任者になっていたり、リッジウェイの隣室の船客がヴェントナー氏からミランダ・ブルックスという女性に変更されていたり、と登場人物関係の変更点が多い。原作のオリンピア号から置き換えられたクイーン・メリー号は実在の豪華客船で、劇中で描かれる1936年5月の処女航海以降、1967年10月に現役を退くまでの31年間で1000回を超す大西洋横断をおこなった。現在はカリフォルニアのロングビーチに係留され、ホテルなどとして利用されている。船上の甲板はセット撮影で[2]、船内もセットで撮影されたと思われるが、「名探偵ポワロ」ではハイビジョンリマスター版でのみ見られる食堂の場面で壁に掛けられている絵は、実際のクイーン・メリー号の食堂に掛けられているのと同じデザインである。なお、そのクイーン・メリー号についてヘイスティングスが「重量8万トンですよ」と言うが、ここでの「トン」は総トン数であって、船の重さではなく容積を表し、1トンは100立方フィート(約2.83立方メートル)である。
ロンドン・スコティッシュ銀行周辺のロケが行われたシティー・オブ・ロンドンは、ローマ人がやってきた際に最初に砦を築いた地域と言われるロンドンの中心部。劇中当時から現在まで金融街として名高く、イングランド銀行や王立取引所、ロイズ保険機構などが密集する。冒頭の通勤風景はイングランド銀行西側、ロンドン・スコティッシュ銀行前の通りはロンバード・ストリートで撮影されているが、ロンドン・スコティッシュ銀行の外観として使われた元バークレーズ銀行本店の建物はすでに取り壊され、新しいビルに建て直されている。なお、ロンドン・スコティッシュ銀行の内部が撮影されたのは元バークレーズ銀行本店内ではなく、北東ロンドンのウォルサムストウに現存するウォルサム・フォレスト・タウン・ホールである。
ミス・レモンの言うポワロとロンドン・スコティッシュ銀行の関わりは〔» エピソードの題名を表示〕「消えた廃坑」のことのように聞こえるが、〔» エピソードの題名を表示〕「消えた廃坑」の銀行の名前はロンドン上海銀行で、オフィスの建物も別物。〔» エピソードの題名を表示〕「消えた廃坑」にまつわる不祥事が原因で他行と合併・移転でもしたのかしらん。
ロンドン・スコティッシュ銀行が移送を計画した自由公債とは、アメリカが第一次大戦中に戦費調達を目的として発行した戦時公債のこと。その名前は、何らかの制約がない公債という意味ではなく、自由を守る戦いのための公債の意である。なお、劇中で見られる債券のデザインは、実際のものとは異なるようだ。
債券を入れて運ぶ特製トランクについて、日本語だとマクニールが「クラッチスクリューが両側に」と言うが、「クラッチスクリュー (clutch screws)」とは、一方向にしかまわせず、締めることはできても緩めることのできないネジのことで、それを両側に配置することがトランクの堅牢性を高めるとは思われない。原語は 'Clutch screws here and here. (こことここにはクラッチスクリューを)' と、錠のあたりを指差しながら言っていて、錠の取りつけにクラッチスクリューを用いているため、錠を取り外してトランクを開けることが不可能なつくりになっているとアピールしていると受け取れる。
リッジウェイが自分の車について「スポーツカーです」と言う台詞は、原語だとショー部長をはねようとした車と同じく Singer (シンガー) というメーカー名が挙げられている。これはショー部長を襲ったのがリッジウェイではないかという疑いを喚起する重要な台詞だが、そのあとに車の品質に関するやりとりが存在するため、日本語ではこちらだけ一般名詞に置き換えられたのだろう。また、リッジウェイが日本語で「でも、もう何か月も乗ってません」と言う台詞は、原語だと 'But I haven't had it for weeks.' で、乗っていない期間は数週間である。
ショー部長が取り落としたコーヒーカップは、まず床でバウンドした際に側面が大きく欠けていたが、次にカットが変わって砕ける前には欠けた部分が直っている。
最初にショー部長の自宅を訪ねたとき、空がまだ明るいのにポワロが「こんばんは (Good evening.)」と挨拶するが、イギリスは日本よりも緯度が高く、また当時もサマータイムが実施されていたので、5月下旬のロンドンの日没は午後9時頃になる。一方、二度目の訪問では、時刻が「4時半」とのことなのに向かいの家に夕日が反射しており、夏至近くとしては不自然である。
クイーン・メリー号の処女航海の様子を報じるブリティッシュ・ムービートーン・ニュースは1929年に始まった実在のニュース映画で、ポワロたちが映る部分をのぞいて同ニュースの実際の映像が使用されており、言及されるノルマンディー号やベレンガリア号も実在の客船である。一方音声は、実際のナレーションを下敷きにしてはいるものの新たに収録されたもので、ニューヨークに入港したニュースの BGM は、「夢」冒頭のニュース映画(こちらはパテ・ガゼットだったが)と同じ曲。[3][4]ナレーターも、「夢」と同じリチャード・ベブと伊藤惣一さんが務めている。なお、そのナレーションの、「一方こちらでは、2000個以上のトランクが次々に船内に積み込まれていきます」という部分は、原語だと 'Another case for Monsieur Poirot. (こちらにもポワロ氏向けのケースが) There are over two thousand cases being loaded safely on board. (2000個以上のケースがつつがなく船内に積み込まれています)' という表現で、 case の「事件」という意味と「トランク」という意味をかけたジョークになっている。サウサンプトンへの帰港の様子も記録映像の流用と思われるが、入港する船から港の建物を見下ろすカットでは、画面の右下や奥に、劇中より時代の新しい自動車が並んでいるのが見える。
リッジウェイの船室が25号室なのは、原作でその隣室がC24号室とされている設定を反映したものだろうか。ただ、そのC24号室の船客ヴェントナー氏に相当する役どころのミランダ・ブルックスの船室は、逆隣の26号室になっているけれど。またドラマでは、ヘイスティングスの船室がその並びの27号室となっているが、その室内は、入り口向かいの廊下の壁の様子から、ドアにつけられた部屋番号だけを取り替えて、リッジウェイと同じ25号室で撮影されていると見られる。加えて、最初にミランダが歩み去っていく廊下も、突き当たりの壁に掛けられた絵を外して、25~27号室前の廊下と同じセットで撮影されたものと見られ、25~27号室前の廊下突き当たりと、そこからつながっているはずのミランダが歩み去る廊下右手の、手すり付近の構造が一致しない。
ハイビジョンリマスター版で、船内の食堂でポワロがクイーン・メリー号を「驚嘆 (marvel) です」と評した際にヘイスティングスが微妙な表情を浮かべるのは、序盤にヘイスティングスとポワロが交わした「〔この処女航海に乗船できるなら〕もう何でもしちゃいますよ」「気が知れませんね、わざわざそんなものに乗りたいなんて」という会話が、原語だと 'I mean, it's an engineering marvel. (これはもう、工学技術の驚嘆ですよ)' 'It is a marvel to me, Hastings, how anyone wishes to travel on such a contraption. (そんなものに乗りたいと思うほうが、わたしには驚嘆ですね)' というやりとりだったためで、ポワロの変わり身に思うところがあるのだろう。
ポワロが銀行前でエズミーに声をかけられて「はい?」と返事をしたり、ヘイスティングスに大量の船酔いの薬を見せて「ほら」と言ったり、クイーン・メリー号内でミランダに声をかけられたあとに「誰だっけな」と言ったりするのは、すべて日本語のみの台詞である。
ハイビジョンリマスター版では、冒頭の地下鉄の出口上に掲げられた街路名表示に「スレッドニードル街」、ポワロたちがロンドン・スコティッシュ銀行の建物へ入っていく際に「ロンドン・スコティッシュ銀行」という字幕が追加された。一方、切換式字幕では、マクニールの部屋へ向かう途中にポワロがババソア部長の名前に言及した際、表記が「ババソワ」になっているほか、リッジウェイの席へ通された場面では、音声だとリッジウェイが案内の女性へ「ありがとう、サンドラ」と声をかけているが、字幕では名前の呼びかけ部分が表示されず、またリッジウェイとヘイスティングスが「こんにちは」「初めまして」と挨拶を交わした箇所は、台詞の文字色が逆になっている。さらに、留置所でババソア部長にポワロが「もう一つおたずねしましょう」と言った台詞に「もう一つお訪ねしましょう」と表示されるが、ここの「たずねる」は「訪問する」ではなく「質問する」の意味である。
ババソア部長とリッジウェイが入れられた留置所は「ベールをかけた女」や「ダベンハイム失そう事件」に出てくるのと同じところで、ババソア部長の独房は「ベールをかけた女」でポワロが、リッジウェイの独房は「ダベンハイム失そう事件」でダベンハイムが入れられていた部屋。ただし、「ベールをかけた女」と「ダベンハイム失そう事件」では入り口はババソア部長の独房側だったのに、今回はリッジウェイの独房側が入り口という設定のようだ。
冒頭の、地下鉄駅のエスカレーターを横から撮した2つの場面では、最初の混雑しはじめらしきカットと、エピソードタイトル表示後の混雑しているカットに、毛が白くなりかけたあごひげの男性や薄いベージュ色のコートを着た女性、新聞を持った男性など、同じ人の姿が見られる。それぞれのカットは別の場所の様子なのだろうか。また、駅の出口では同心円模様の傘を差した女性が男性と連れだってババソア部長たちと反対方向へ向かうが、次の場面では同じ女性が女性と並んでババソア部長たちの前を歩いている。
蛍光灯の商業生産が始まったのはクイーン・メリー号の処女航海翌年の1937年のことだが、冒頭の地下鉄駅の構内には蛍光灯が用いられている。また、ババソア部長たちが花売りのいた柱廊に差しかかる際、奥の交差点中央に現代的な白い街灯が立っているのが見える。
雨のなか、ショー部長が車にひかれそうになる場面では、襲いかかる車を正面から撮したカットで見える空はなぜか晴れている。加えて、このカットだけは前後の場面と異なるイングランド銀行北側で撮影されており、車に対するイングランド銀行の建物の位置が反対側になっているほか、車も赤のシンガーから黒のアウディに変わる。
ニューヨークへ向かう途中、海面を撮した場面では進行方向右手から光が当たっているが、このとき船は北回帰線より北側を西進しているはずで、北となる右手に太陽や月が来るのはおかしい。また、ハイビジョンリマスター版では、ディナーの場面の前に、船の後方の夕焼けを撮したカットが入るが、これも同様に不自然である。
帰国して出迎えのエズミーが待つ場所へ差しかかる際、ポワロたちを正面から撮したカットでは、出てきたばかりの手荷物検査所への入り口が見えない。これはそこのリフトを動かして別の階で撮影した映像を編集でつないだためと思われ、 LOAD NOT TO EXCESS FIVE TONS (最大積載量5トン) という掲示などにパネルを重ねて見えないようにしてあるのも、一見ただの通路に見えるそこが実際はリフトであることを隠したい意図が感じられる。
エズミーが住むロンドン北部ハイゲートのハイポイントIは、ロンドン動物園のペンギンプール(「なぞの盗難事件」に登場)などで知られるバーソルド・ルベトキンのデザインで有名なマンションで[5]、60年代のイギリスドラマ「おしゃれ㊙探偵」「スパイ㊙作戦」でも、ダイアナ・リグ演じるエマが住むマンションとして使われていた建物である。ショー部長の自宅があるのは、ハイゲートに近いイースト・フィンチリーのハッチングス・ウォーク。ポワロたちがエズミーの話を聞いたカフェはセットと見られ、「コックを捜せ」でイライザがクロチェットの話を聞いたカフェと同じ椅子が使われている(ついでに、銀行のリッジウェイの席でヘイスティングスがかけた椅子も同じである)。ハイビジョンリマスター版で、ポワロがたたずんでエズミーの話を回顧していた公園はゴールダーズ・ヒル・パーク。
ババソア部長とショー部長を演じるイーワン・フーパーとデビッド・キルターはそれぞれ、フランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演の「二人で探偵を」シリーズで、「婚約者失踪の謎」のハリストン博士(劇中の日本語音声による。原語は Dr Horriston で、日本版エンディングクレジットでは「ハリスン」と記載)役と「かくれ造幣局の謎」のレイドロー大佐役を演じている。なお、その際、ハリストン博士の吹替を担当したのは、本作ではマクニール役の大木民夫さん。ミランダ・ブルックスを演じたリジー・マキナリーは、ジェラルディン・マクイーワン主演「ミス・マープル」シリーズの「牧師館の殺人」でクレメンス牧師を演じたティム・マキナリーの妹で、ジョン・マルコヴィッチ主演の「ABC殺人事件」ではジェニー・バーナード(ベティの母親)役を演じている。
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ハイビジョンリマスター版でのみ見られる、リッジウェイが怪しい男と会う場面では、日本語だと金の準備について「来週には用意できる」「10日だよ。必ず」と言うので、「10日」が翌週の日付のようにも聞こえるが、これは1936年5月25日月曜日の出来事なので(6月)10日は翌週にならない。原語は 'Another week. That's all. (もう1週間。それだけだよ)' 'Ten days. No more. (10日。それ以上は)' と言っており、1週間後には準備できると最初に言ったのを10日後と言い直して期限を延ばしている。なお、この日はクイーン・メリー号出航の2日前で、のちにリッジウェイ本人が「〔債券の移送は〕往復わずか10日だよ」と言うので、1週間後でも10日後でもまだ帰国していない計算となるため、この時点でクイーン・メリー号へ自分が乗船する想定はリッジウェイになく、公債の着服で金を準備する見込みでの発言と解釈すると矛盾が生じるようになっている。
ババソア部長がトランクに収めた債券にはすべて同じ番号が振られているが、債券が偽物であることを示す意図によるものだろうか。また、その番号 1926903 はアメリカ金融博物館に所蔵されている債券と一致している[6]。前述のとおり劇中の債券のデザインは実際のものと異なるようだが、小道具の製作にあたって一部を参考にしたのだろうか。
帰国したポワロが警官に「この男を逮捕してください、債券100万ドルを盗んだ犯人です」と言う台詞は、原語だと 'I want you to arrest this man for the theft of one million dollars in the Liberty Bonds. (債券100万ドルを盗んだ容疑でこの男を逮捕してください)' という台詞で、明確な虚偽にならないよう配慮された表現になっている。
露見してミランダが変装を解く際、カツラをはずす段階ですでに、上の前歯につけていた付け歯がはずされている。したがって、彼女の「見事な変身」は、ヘイスティングスの言うような「髪型とメーキャップ」だけによるものではない。
原作では事件発生後にエズミーから依頼を受けてポワロが解決に乗り出す筋書きだったが、ドラマではババソア部長の依頼で事件発生前からポワロが関わり、債券移送にも同行する。また、エズミーがババソアの秘書になって名字もファーカーからダルリーシュ(原語は Dalgleish だが、なぜか日本語では g を発音しない)に変更されていたり、リッジウェイがババソアの甥でなくなってギャンブル好きに変更されていたり、原作では「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」も担当していたマクニール警部が銀行の警備責任者になっていたり、リッジウェイの隣室の船客がヴェントナー氏からミランダ・ブルックスという女性に変更されていたり、と登場人物関係の変更点が多い。原作のオリンピア号から置き換えられたクイーン・メリー号は実在の豪華客船で、劇中で描かれる1936年5月の処女航海以降、1967年10月に現役を退くまでの31年間で1000回を超す大西洋横断をおこなった。現在はカリフォルニアのロングビーチに係留され、ホテルなどとして利用されている。船上の甲板はセット撮影で[2]、船内もセットで撮影されたと思われるが、「名探偵ポワロ」ではハイビジョンリマスター版でのみ見られる食堂の場面で壁に掛けられている絵は、実際のクイーン・メリー号の食堂に掛けられているのと同じデザインである。なお、そのクイーン・メリー号についてヘイスティングスが「重量8万トンですよ」と言うが、ここでの「トン」は総トン数であって、船の重さではなく容積を表し、1トンは100立方フィート(約2.83立方メートル)である。
ロンドン・スコティッシュ銀行周辺のロケが行われたシティー・オブ・ロンドンは、ローマ人がやってきた際に最初に砦を築いた地域と言われるロンドンの中心部。劇中当時から現在まで金融街として名高く、イングランド銀行や王立取引所、ロイズ保険機構などが密集する。冒頭の通勤風景はイングランド銀行西側、ロンドン・スコティッシュ銀行前の通りはロンバード・ストリートで撮影されているが、ロンドン・スコティッシュ銀行の外観として使われた元バークレーズ銀行本店の建物はすでに取り壊され、新しいビルに建て直されている。なお、ロンドン・スコティッシュ銀行の内部が撮影されたのは元バークレーズ銀行本店内ではなく、北東ロンドンのウォルサムストウに現存するウォルサム・フォレスト・タウン・ホールである。
ミス・レモンの言うポワロとロンドン・スコティッシュ銀行の関わりは〔» エピソードの題名を表示〕「消えた廃坑」のことのように聞こえるが、〔» エピソードの題名を表示〕「消えた廃坑」の銀行の名前はロンドン上海銀行で、オフィスの建物も別物。〔» エピソードの題名を表示〕「消えた廃坑」にまつわる不祥事が原因で他行と合併・移転でもしたのかしらん。
ロンドン・スコティッシュ銀行が移送を計画した自由公債とは、アメリカが第一次大戦中に戦費調達を目的として発行した戦時公債のこと。その名前は、何らかの制約がない公債という意味ではなく、自由を守る戦いのための公債の意である。なお、劇中で見られる債券のデザインは、実際のものとは異なるようだ。
債券を入れて運ぶ特製トランクについて、日本語だとマクニールが「クラッチスクリューが両側に」と言うが、「クラッチスクリュー (clutch screws)」とは、一方向にしかまわせず、締めることはできても緩めることのできないネジのことで、それを両側に配置することがトランクの堅牢性を高めるとは思われない。原語は 'Clutch screws here and here. (こことここにはクラッチスクリューを)' と、錠のあたりを指差しながら言っていて、錠の取りつけにクラッチスクリューを用いているため、錠を取り外してトランクを開けることが不可能なつくりになっているとアピールしていると受け取れる。
リッジウェイが自分の車について「スポーツカーです」と言う台詞は、原語だとショー部長をはねようとした車と同じく Singer (シンガー) というメーカー名が挙げられている。これはショー部長を襲ったのがリッジウェイではないかという疑いを喚起する重要な台詞だが、そのあとに車の品質に関するやりとりが存在するため、日本語ではこちらだけ一般名詞に置き換えられたのだろう。また、リッジウェイが日本語で「でも、もう何か月も乗ってません」と言う台詞は、原語だと 'But I haven't had it for weeks.' で、乗っていない期間は数週間である。
ショー部長が取り落としたコーヒーカップは、まず床でバウンドした際に側面が大きく欠けていたが、次にカットが変わって砕ける前には欠けた部分が直っている。
最初にショー部長の自宅を訪ねたとき、空がまだ明るいのにポワロが「こんばんは (Good evening.)」と挨拶するが、イギリスは日本よりも緯度が高く、また当時もサマータイムが実施されていたので、5月下旬のロンドンの日没は午後9時頃になる。一方、二度目の訪問では、時刻が「4時半」とのことなのに向かいの家に夕日が反射しており、夏至近くとしては不自然である。
クイーン・メリー号の処女航海の様子を報じるブリティッシュ・ムービートーン・ニュースは1929年に始まった実在のニュース映画で、ポワロたちが映る部分をのぞいて同ニュースの実際の映像が使用されており、言及されるノルマンディー号やベレンガリア号も実在の客船である。一方音声は、実際のナレーションを下敷きにしてはいるものの新たに収録されたもので、ニューヨークに入港したニュースの BGM は、「夢」冒頭のニュース映画(こちらはパテ・ガゼットだったが)と同じ曲。[3][4]ナレーターも、「夢」と同じリチャード・ベブと伊藤惣一さんが務めている。なお、そのナレーションの、「一方こちらでは、2000個以上のトランクが次々に船内に積み込まれていきます」という部分は、原語だと 'Another case for Monsieur Poirot. (こちらにもポワロ氏向けのケースが) There are over two thousand cases being loaded safely on board. (2000個以上のケースがつつがなく船内に積み込まれています)' という表現で、 case の「事件」という意味と「トランク」という意味をかけたジョークになっている。サウサンプトンへの帰港の様子も記録映像の流用と思われるが、入港する船から港の建物を見下ろすカットでは、画面の右下や奥に、劇中より時代の新しい自動車が並んでいるのが見える。
リッジウェイの船室が25号室なのは、原作でその隣室がC24号室とされている設定を反映したものだろうか。ただ、そのC24号室の船客ヴェントナー氏に相当する役どころのミランダ・ブルックスの船室は、逆隣の26号室になっているけれど。またドラマでは、ヘイスティングスの船室がその並びの27号室となっているが、その室内は、入り口向かいの廊下の壁の様子から、ドアにつけられた部屋番号だけを取り替えて、リッジウェイと同じ25号室で撮影されていると見られる。加えて、最初にミランダが歩み去っていく廊下も、突き当たりの壁に掛けられた絵を外して、25~27号室前の廊下と同じセットで撮影されたものと見られ、25~27号室前の廊下突き当たりと、そこからつながっているはずのミランダが歩み去る廊下右手の、手すり付近の構造が一致しない。
ハイビジョンリマスター版で、船内の食堂でポワロがクイーン・メリー号を「驚嘆 (marvel) です」と評した際にヘイスティングスが微妙な表情を浮かべるのは、序盤にヘイスティングスとポワロが交わした「〔この処女航海に乗船できるなら〕もう何でもしちゃいますよ」「気が知れませんね、わざわざそんなものに乗りたいなんて」という会話が、原語だと 'I mean, it's an engineering marvel. (これはもう、工学技術の驚嘆ですよ)' 'It is a marvel to me, Hastings, how anyone wishes to travel on such a contraption. (そんなものに乗りたいと思うほうが、わたしには驚嘆ですね)' というやりとりだったためで、ポワロの変わり身に思うところがあるのだろう。
ポワロが銀行前でエズミーに声をかけられて「はい?」と返事をしたり、ヘイスティングスに大量の船酔いの薬を見せて「ほら」と言ったり、クイーン・メリー号内でミランダに声をかけられたあとに「誰だっけな」と言ったりするのは、すべて日本語のみの台詞である。
ハイビジョンリマスター版では、冒頭の地下鉄の出口上に掲げられた街路名表示に「スレッドニードル街」、ポワロたちがロンドン・スコティッシュ銀行の建物へ入っていく際に「ロンドン・スコティッシュ銀行」という字幕が追加された。一方、切換式字幕では、マクニールの部屋へ向かう途中にポワロがババソア部長の名前に言及した際、表記が「ババソワ」になっているほか、リッジウェイの席へ通された場面では、音声だとリッジウェイが案内の女性へ「ありがとう、サンドラ」と声をかけているが、字幕では名前の呼びかけ部分が表示されず、またリッジウェイとヘイスティングスが「こんにちは」「初めまして」と挨拶を交わした箇所は、台詞の文字色が逆になっている。さらに、留置所でババソア部長にポワロが「もう一つおたずねしましょう」と言った台詞に「もう一つお訪ねしましょう」と表示されるが、ここの「たずねる」は「訪問する」ではなく「質問する」の意味である。
ババソア部長とリッジウェイが入れられた留置所は「ベールをかけた女」や「ダベンハイム失そう事件」に出てくるのと同じところで、ババソア部長の独房は「ベールをかけた女」でポワロが、リッジウェイの独房は「ダベンハイム失そう事件」でダベンハイムが入れられていた部屋。ただし、「ベールをかけた女」と「ダベンハイム失そう事件」では入り口はババソア部長の独房側だったのに、今回はリッジウェイの独房側が入り口という設定のようだ。
冒頭の、地下鉄駅のエスカレーターを横から撮した2つの場面では、最初の混雑しはじめらしきカットと、エピソードタイトル表示後の混雑しているカットに、毛が白くなりかけたあごひげの男性や薄いベージュ色のコートを着た女性、新聞を持った男性など、同じ人の姿が見られる。それぞれのカットは別の場所の様子なのだろうか。また、駅の出口では同心円模様の傘を差した女性が男性と連れだってババソア部長たちと反対方向へ向かうが、次の場面では同じ女性が女性と並んでババソア部長たちの前を歩いている。
蛍光灯の商業生産が始まったのはクイーン・メリー号の処女航海翌年の1937年のことだが、冒頭の地下鉄駅の構内には蛍光灯が用いられている。また、ババソア部長たちが花売りのいた柱廊に差しかかる際、奥の交差点中央に現代的な白い街灯が立っているのが見える。
雨のなか、ショー部長が車にひかれそうになる場面では、襲いかかる車を正面から撮したカットで見える空はなぜか晴れている。加えて、このカットだけは前後の場面と異なるイングランド銀行北側で撮影されており、車に対するイングランド銀行の建物の位置が反対側になっているほか、車も赤のシンガーから黒のアウディに変わる。
ニューヨークへ向かう途中、海面を撮した場面では進行方向右手から光が当たっているが、このとき船は北回帰線より北側を西進しているはずで、北となる右手に太陽や月が来るのはおかしい。また、ハイビジョンリマスター版では、ディナーの場面の前に、船の後方の夕焼けを撮したカットが入るが、これも同様に不自然である。
帰国して出迎えのエズミーが待つ場所へ差しかかる際、ポワロたちを正面から撮したカットでは、出てきたばかりの手荷物検査所への入り口が見えない。これはそこのリフトを動かして別の階で撮影した映像を編集でつないだためと思われ、 LOAD NOT TO EXCESS FIVE TONS (最大積載量5トン) という掲示などにパネルを重ねて見えないようにしてあるのも、一見ただの通路に見えるそこが実際はリフトであることを隠したい意図が感じられる。
エズミーが住むロンドン北部ハイゲートのハイポイントIは、ロンドン動物園のペンギンプール(「なぞの盗難事件」に登場)などで知られるバーソルド・ルベトキンのデザインで有名なマンションで[5]、60年代のイギリスドラマ「おしゃれ㊙探偵」「スパイ㊙作戦」でも、ダイアナ・リグ演じるエマが住むマンションとして使われていた建物である。ショー部長の自宅があるのは、ハイゲートに近いイースト・フィンチリーのハッチングス・ウォーク。ポワロたちがエズミーの話を聞いたカフェはセットと見られ、「コックを捜せ」でイライザがクロチェットの話を聞いたカフェと同じ椅子が使われている(ついでに、銀行のリッジウェイの席でヘイスティングスがかけた椅子も同じである)。ハイビジョンリマスター版で、ポワロがたたずんでエズミーの話を回顧していた公園はゴールダーズ・ヒル・パーク。
ババソア部長とショー部長を演じるイーワン・フーパーとデビッド・キルターはそれぞれ、フランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演の「二人で探偵を」シリーズで、「婚約者失踪の謎」のハリストン博士(劇中の日本語音声による。原語は Dr Horriston で、日本版エンディングクレジットでは「ハリスン」と記載)役と「かくれ造幣局の謎」のレイドロー大佐役を演じている。なお、その際、ハリストン博士の吹替を担当したのは、本作ではマクニール役の大木民夫さん。ミランダ・ブルックスを演じたリジー・マキナリーは、ジェラルディン・マクイーワン主演「ミス・マープル」シリーズの「牧師館の殺人」でクレメンス牧師を演じたティム・マキナリーの妹で、ジョン・マルコヴィッチ主演の「ABC殺人事件」ではジェニー・バーナード(ベティの母親)役を演じている。
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ハイビジョンリマスター版でのみ見られる、リッジウェイが怪しい男と会う場面では、日本語だと金の準備について「来週には用意できる」「10日だよ。必ず」と言うので、「10日」が翌週の日付のようにも聞こえるが、これは1936年5月25日月曜日の出来事なので(6月)10日は翌週にならない。原語は 'Another week. That's all. (もう1週間。それだけだよ)' 'Ten days. No more. (10日。それ以上は)' と言っており、1週間後には準備できると最初に言ったのを10日後と言い直して期限を延ばしている。なお、この日はクイーン・メリー号出航の2日前で、のちにリッジウェイ本人が「〔債券の移送は〕往復わずか10日だよ」と言うので、1週間後でも10日後でもまだ帰国していない計算となるため、この時点でクイーン・メリー号へ自分が乗船する想定はリッジウェイになく、公債の着服で金を準備する見込みでの発言と解釈すると矛盾が生じるようになっている。
ババソア部長がトランクに収めた債券にはすべて同じ番号が振られているが、債券が偽物であることを示す意図によるものだろうか。また、その番号 1926903 はアメリカ金融博物館に所蔵されている債券と一致している[6]。前述のとおり劇中の債券のデザインは実際のものと異なるようだが、小道具の製作にあたって一部を参考にしたのだろうか。
帰国したポワロが警官に「この男を逮捕してください、債券100万ドルを盗んだ犯人です」と言う台詞は、原語だと 'I want you to arrest this man for the theft of one million dollars in the Liberty Bonds. (債券100万ドルを盗んだ容疑でこの男を逮捕してください)' という台詞で、明確な虚偽にならないよう配慮された表現になっている。
露見してミランダが変装を解く際、カツラをはずす段階ですでに、上の前歯につけていた付け歯がはずされている。したがって、彼女の「見事な変身」は、ヘイスティングスの言うような「髪型とメーキャップ」だけによるものではない。
- [1] Poirot and me: Anthony Horowitz | Television & radio | The Guardian
- [2] Poirot - RDW Scenery Construction
- [3] Queen Mary Starts On Maiden Voyage | AP Archive
- [4] Queen Mary Britain's Super Ship Arrives In New York - Then Home Again | AP Archive
- [5] HIGHPOINT I HIGHPOINT I (NUMBERS A TO D) HIGHPOINT I (NUMBERS G,H,I,K) - 1358885 | Historic England
- [6] World War I Bonds | Museum of American Finance
ロケ地写真
カットされた場面
日本
オリジナル版
[06:45/0:24] | ポワロ、ヘイスティングス、マクニールが、マクニールの部屋へ向かう場面 |
[07:56/0:24] | ポワロとヘイスティングスがリッジウェイの席へ通される場面 |
[10:27/0:43] | リッジウェイと借金の取立人の会話 |
[14:51/0:51] | 笑みを浮かべるマクニール 〜 公園でポワロがエズミーの話を回顧する場面 〜 ポワロとミス・レモンが荷造りしているところへヘイスティングスが帰ってくる場面 |
[15:22/0:27] | 階段を下りていくババソア、ショー、マクニール 〜 3人が金庫室へ入っていく場面前半 |
[20:11/2:46] | 海面のアップ後半 〜 自室で眠るポワロ 〜 海面のアップ 〜 朝、ポワロが甲板を歩く場面 〜 夕焼けの海 〜 ポワロ、ヘイスティングス、リッジウェイの食事の場面 |
[31:09/0:09] | 下船口でフィリップを待つエズミー 〜 ポワロたちが上陸する場面冒頭 |
ハイビジョンリマスター版
なし映像ソフト
- [VHS] 「名探偵エルキュール・ポアロ 第22巻 百万ドル債券盗難事件」(字幕) 日本クラウン
- [DVD] 「名探偵ポワロ 12 あなたの庭はどんな庭?, 100万ドル債券盗難事件」(字幕・吹替) ビームエンタテインメント(現ハピネット・ピクチャーズ)※1
- [DVD] 「名探偵ポワロ [完全版] 12 あなたの庭はどんな庭?, 100万ドル債券盗難事件」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ※2
- [DVD] 「名探偵ポワロ DVDコレクション 45 100万ドル債券盗難事件」(字幕・吹替) デアゴスティーニ・ジャパン※3
- [BD] 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX Disc 6 スタイルズ荘の怪事件, あなたの庭はどんな庭?, 100万ドル債券盗難事件」(字幕/吹替) ハピネット・ピクチャーズ※4
- ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX2」にも収録
- ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX1」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 4」にも収録
- ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
- ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 1」に収録