なぞの遺言書
The Case of the Missing Will

放送履歴

日本

オリジナル版(44分00秒)

  • 1993年07月31日 21時45分〜 (NHK総合)
  • 1994年03月07日 17時05分〜 (NHK総合)
  • 1995年08月23日 17時15分〜 (NHK総合)
  • 1999年01月04日 15時10分〜 (NHK総合)
  • 2003年07月25日 18時00分〜 (NHK衛星第2)

ハイビジョンリマスター版(50分30秒)

  • 2016年07月09日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2016年12月14日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2020年12月12日 17時09分〜 (NHK BSプレミアム)※1
  • 2021年11月30日 09時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2023年02月22日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)※2
  • ※1 エンディング最後の画面下部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※2 BSプレミアムでの放送は、オープニング冒頭の画面左上にBS4K同時放送のアイコン表示あり

海外

  • 1993年02月07日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 「謎の遺言書」 - 『ポアロ登場』 クリスティー文庫 真崎義博訳
  • 「謎の遺言書」 - 『ポアロ登場』 ハヤカワミステリ文庫 小倉多加志訳
  • 「遺言書の謎」 - 『ポワロの事件簿1』 創元推理文庫 厚木淳訳
  • 「遺言書紛失事件」 - 『クリスティ短編集2』 新潮文庫 井上宗次・石田英二訳

原書

雑誌等掲載

  • The Case of the Missing Will, The Sketch, 31 October 1923 (UK)
  • The Missing Will, The Blue Book Magazine, January 1925 (USA)

短篇集

  • The Case of the Missing Will, Poirot Investigates, The Bodley Head, 21 March 1924 (UK)
  • The Case of the Missing Will, Poirot Investigates, Dodd Mead, 1925 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / なぞの遺言書, THE CASE OF THE MISSING WILL / Dramatized by DOUGLAS WATKINSON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / なぞの遺言書 // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / PAULINE MORAN / THE CASE OF THE MISSING WILL / Dramatized by DOUGLAS WATKINSON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 ダグラス・ワトキンソン 監督 ジョン・ブルース 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞 ミス・レモン 翠 準子  バイオレット 島本須美 カンピオン 藤波京子 セーラ 麻生美代子  大木民夫 宮川洋一 山野史人 増岡 弘 藤 夏子 辻󠄀谷耕史 中村秀利 梁田清之 田原アルノ / 日本語版 宇津木道子 山田悦司  福岡浩美 南部満治 金谷和美

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 ダグラス・ワトキンソン 演出 ジョン・ブルース 制作 LWT (イギリス)  出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬/安原 義人 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞 ミス・レモン(ポーリン・モラン) 翠 準子  バイオレット 島本 須美 カンピオン 藤波 京子 セーラ 麻生 美代子  大木 民夫 宮川 洋一 山野 史人 増岡 弘 藤 夏子 辻󠄁谷 耕史 中村 秀利 梁田 清之 田原 アルノ 塚󠄀田 正昭 倉持 良子 水谷 ケイコ 原田 晃 後藤 淳一 坂本 圭 関 幸司  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Captain Hastings: HUGH FRASER; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Miss Lemon: PAULINE MORAN; Violet Wilson: BETH GODDARD; Sarah Siddaway: ROWENA COOPER; Dr. Pritchard: RICHARD DURDEN; Andrew Marsh: MARK KINGSTON; Phyllida Campion: SUSAN TRACY; Margaret Baker: GILLIAN HANNA; John Siddaway: TERENCE HARDIMAN; Walter Baker: JON LAURIMORE; Robert Siddaway: EDWARD ATTERTON; Peter Baker: NEIL STUKE; Doctor: STEPHEN OXLEY; President: SCOTT CLEVERDON; Undergraduate: GEORGE BEACH; Children: SIMON OWEN, GLEN MEAD, STEPHANIE THWAITES; Stunts: SY HOLLAND / Developed for Television by Carnival Films; (中略) Production Designer: ROB HARRIS; Director of Photography: CHRIS O'DELL; Music: CHRISTOPHER GUNNING; Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN; Director: JOHN BRUCE

あらすじ

 クラブツリーの主アンドルー・マーシュは女性の社会的地位については昔ながらの考えの持ち主だった。しかし、養女バイオレットの才能を認め、彼女に全財産を遺すことに決める。ところが、遺言書を書きかえる前に彼は死に、前の遺言書も消えた……

事件発生時期

1936年6月中旬 〜

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
アーサー・ヘイスティングスポワロの探偵事務所のパートナー、陸軍大尉
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
フェリシティ・レモンポワロの秘書
アンドルー・マーシュポワロの友人、クラブツリーの主
バイオレット・ウィルソンアンドルーの養女、マディングリー・カレッジ学生
フィリダ・カンピオンマディングリー・カレッジ学長
マーチン・アーサー・プリチャード医師、エリンフォート医療財団会長
ジョン・H・C・シダウェイ弁護士
セーラ・シダウェイジョンの妻、看護婦
ロバート・シダウェイシダウェイ夫妻の息子、キングズ・カレッジ学生
ウォルター・ベーカー巡査部長
マーガレット・ベーカーウォルターの妻、クラブツリーの家政婦
ピーター・ベーカーベーカー夫妻の息子

解説、みたいなもの

 イギリスでオックスフォードと双璧をなす大学都市、ケンブリッジを舞台とするエピソード。しかし、本作品でドラマ化にあたって加えられた脚色は、原作の原形をとどめているのが一部の固有名詞と設定のみというシリーズ中もっとも大胆なもので、ケンブリッジについても、原作ではバイオレットがその卒業生と触れられる程度にすぎなかった。原作のあらすじはというと、アンドルー・マーシュが死ぬ前に隠した遺言書を、姪のバイオレット・マーシュ(ウィルソンではなく)の依頼でポワロが捜すというもの。ドラマでは、その背景となっていた〈新しい女性〉バイオレットと伯父アンドルーの価値観の対立を、当時のケンブリッジ大学での女子学生の待遇格差に絡めて発展させ、遺産相続に絡む殺人事件に仕立て直している。原作のベーカー夫妻はクラブツリーの住み込みの使用人で、ミス・カンピオン、ドクター・プリチャード、シダウェイ親子、ピーター・ベーカーなどはそもそも登場しない。そして、展開の変更によってアンドルーの遺言書自体になぞめいた部分がなくなったため、原作の邦題に拠った「なぞの遺言書」というタイトルが話の内容と食い違う結果になった(原題を直訳すれば、「消えた遺言書の事件」となる)。
 ケンブリッジの大学都市としての歴史は、オックスフォードで住民と対立した学者が1209年にこの地へ逃れてきたことを端緒とする。現存する最古のカレッジは1284年に設立されたピーターハウス・カレッジで、現在は大小31のカレッジによって構成されている。ケンブリッジ最初の女子カレッジであったガートン・カレッジ(現在は共学)の設立は1869年で、オックスフォード大学を含む他大学では1930年代にはすでに女子学生にも学位が授与されていたが、劇中に見られるように、ケンブリッジにおける女子学生の権利は大きく制限されており、ガートン・カレッジも正式なケンブリッジ大学のカレッジとして認められていなかった。ケンブリッジで女子学生に初めて正式に学位が授与されたのは、劇中より11年後の1947年のこと。[1]なお、原作のバイオレットはそのガートン・カレッジの卒業生という設定だが、ドラマではマディングリー・カレッジという架空のカレッジの学生となっている(バイオレットの寮の、在室状況掲示板からそれがわかる)。ただし、ガートンとマディングリーはいずれもケンブリッジ北西郊外の地名で、その名前や事情はガートン・カレッジを意識していると見られる。しかし、ご当地ミステリとしての風情を重視したのか、ケンブリッジでの撮影は市街中心部でおこなわれ、セント・ジョンズ・カレッジとその周辺、トリニティー・レーンおよびトリニティー・ストリート、トランピングトン・ストリートが撮影に使われた。ただし、実際の地理に照らすと、討論会へ向かうヘイスティングスの車のルートはかなり変である。また、その討論会の会場はケンブリッジ・ユニオン (The Cambridge Union) の本堂。大学における union は学生会を指す場合があり、日本語でも「学生クラブ」と言われているが、ケンブリッジ・ユニオンはケンブリッジ大学のディベートクラブで、ケンブリッジ大学学生クラブ (Cambridge Students' Union) とは別組織である。一方、ミス・カンピオンが「個人で」学位授与式をおこなった講堂はケンブリッジにはなく、「マースドン荘の惨劇」で民間防衛訓練がおこなわれたラングドン・ダウン・センターのノーマンズフィールド・シアター。ここは「二重の罪」ではウィットコム女子大ホールとして撮影に使われており、ウィットコムからケンブリッジへ講堂が移設されたことになる。「安いマンションの事件」の〈ブラックキャット〉の楽屋周辺も同所。
 冒頭、1926年が明けた際の劇伴は、日本では「蛍の光」として知られる曲のメロディーだが、この曲はもともと Auld Lang Syne と呼ばれるスコットランド民謡で、イギリスを含む英語圏では、新年が明けたことを祝って歌われる。
 原語音声によれば、釘がヘイスティングスの車のタイヤをパンクさせた場所はバルドックの町。ここは現在、ロンドンからケンブリッジへ車で向かう際にA1号線からA505号線へ入るあたりだが、劇中当時にA505号線はまだ存在せず、ヘイスティングスの車はバルドックでA1号線を降りて一般道に入ったところ、釘を踏んでしまったのだろう。
 ポワロたちを出迎えたカンピオン学長の台詞が、原語では 'The debate's under way, and Andrew's already speaking. (もう始まってアンドルーが話してるわ)' なのに、日本語だと「アンドルーの話が終わって、まもなくおひらきよ」となっているのは、「名探偵ポワロ」オリジナル版ではその前後のアンドルーとロバートのスピーチの場面がまるまるカットされて、そのまま「おひらき」の場面につながっているため。カットした場面が補われたハイビジョンリマスター版や映像ソフトの日本語音声でもこの部分の吹替はそのまま使われており、そのために話の展開と台詞が食い違ってしまっている。また、ハイビジョンリマスター版で演説のあと、ロバートが「アンドルーも〔立派な演説だった〕ね。君の熱弁といい勝負だったよ」と応じるところは、原語だと 'So did Andrew—once we ignored what he actually said. (アンドルーもね。演説の内容自体を脇に置けば)' という表現で、演説は見事だったがその主張には賛成できないという趣旨である。ハイビジョンリマスター版ではその後もこのスピーチに端を発するアンドルーとロバートの対立が描かれ、ロバートがアンドルー殺害の動機を持っていることがより強調される。
 当初のアイディアでは、実在の政治家であるサー・オズワルド・モズレーとポワロが、同じ討論の場に立つ予定だったという。サー・オズワルド・モズレーは、「愛国殺人」で見られた「黒シャツ党」ことイギリスファシスト連合を設立した人物で、ポワロはファシストに反対するスピーチをおこなうことになっていたのだが、クリスティーの親族の反対に遭い、方針の変更がおこなわれたようだ。これは、当初のドラマオリジナルのプロットの評価が芳しくなかっただけでなく、実在の政治家、それもファシスト傾向のある人物とポワロを組みあわせるのが嫌われたためだという。[2]ちなみに、サー・オズワルド・モズレーは登場しないが、ジョン・マルコヴィッチ主演の「ABC殺人事件」には、ポワロがイギリスファシスト連合に反発を示してそのポスターを破る場面がある。
 ポワロとアンドルーの出会いの場であるキャベンディッシュ・クリニックは、このドラマシリーズで言及されたポワロの通う歯科医院としては3軒目。本作の舞台は1936年、「愛国殺人」の舞台は1937年なので、このクリニックに通っていたのはモーリーの歯科医院より前のことと思われるが、1934年が舞台の「24羽の黒つぐみ」で通っていたボニントンの歯科医院との時系列ははっきりしない。なお、「愛国殺人」以外の歯科医に関する設定はドラマオリジナルである。
 クラブツリーでの昼食会のあと、ドクター・プリチャードが聴診器を「図書室の下のほうに」持ってくるようセーラ・シダウェイに頼む場面があるが、図書室に上下があるのだろうか。原語では through to the library (図書室まで) という表現で、特に「下のほう」というニュアンスはない。
 ヘイスティングスに「どうですか、この馬」と訊かれてポワロが「大きいですね、重い人でも大丈夫でしょう」と答えるのは日本語独自の冗談で、原語だと 'I think that he is large, and you should take care, Hastings. (大きいですね、〔乗りこなしに〕気をつけたほうがいいですよ)' と言っている。
 シダウェイ法律事務所前でポワロとヘイスティングスが話す場面では、カメラの向きによって脇を通りすぎる通行人が変わる。また、ポワロたちが事務所から出てきた際に子供を抱えて画面手前へ歩いてくるナースは、シダウェイ法律事務所前へ場面が移った際に乳母車を押す黒のダブルコートの女性と連れだって逆方向へ歩いていたのと同じナースであり、ポワロが「認めると思いますか?」と言ったときに横を通りすぎていく紺のスーツの後ろ姿の男性は、書類を抱えて事務所へ入っていったのと同じ男性らしく見受けられる。後者の男性は、アンドルーの葬儀にも参列している。また、ミス・カンピオンがシダウェイ法律事務所を訪れる際にすれちがう長身の男性も、やはりアンドルーの葬儀に参列していた。
 ジャップ警部を迎えたポワロが「ベイカー巡査部長に会いましたね」と言うのは、どこかよそで会ったことを確認しているようにも聞こえるが、ジャップ警部と同じ車の後部座席に一緒に乗ってきたのがそのベイカー巡査部長である。原語は 'You have met Sergeant Baker, I see. (ベイカー巡査部長にはもう会ったようですね)' という表現で、引きあわせるまでもなかったというニュアンスである。
 バイオレットの台詞に出てくるクイーン・メリー号は、「100万ドル債券盗難事件」でポワロたちが乗った実在の豪華客船。「エジプト墳墓のなぞ」にもちょっとだけ登場している。
 ミス・カンピオンが「個人で」学位授与式をおこなった講堂の、舞台手前の左右の壁上方には、1930年代らしからぬデザインのスピーカーがついているのが見える。また、ミス・カンピオンが入院した病院の天井には蛍光灯らしき設備が見えるが、蛍光灯の商業生産が始まったのは1937年のことで時代に合わない。
 ミス・レモンが病院のカルテを調べてまわる場面では、最初に赤い服を着ていたのが、途中で青い服に変わり、また赤い服に戻る。このとき、手袋も服の色にあわせて変わる。いずれの服も直前の病院で彼女が着ていた服とは異なるので、ポワロの依頼を受けてから数日にわたる調査だったということだろうか。また、ミス・レモンがクラブツリーへ到着した際には、調査先から直行したようにも見えるが、彼女が着ているのは、最後の調査の場面と異なる青いほうの服である。
 バイオレット卒業後の集まりでポワロが話を始める際、誰かの発した歯擦音にハイビジョンリマスター版の切換式字幕は「(セーラ)シシ~ッ!」と表示されるが、そのとき画面を横切っているのはマーガレットである。また、謎解きの最中、日本語ではポワロがカンピオン学長を一度だけ「マダム・カンピオン」と呼ぶが、原語では前後同様 Mademoiselle Campion (マドモワゼル・カンピオン) と呼んでいる。
 冒頭、1926年から現代に時代が移った際、オリジナル版では CAMBRIDGE 10 years later という英語の字幕と「10年後 ケンブリッジ」という日本語の字幕が同時に表示されていたが、ハイビジョンリマスター版では英語の字幕がなく、日本語の字幕のみが画面下方に表示される。一方、「シダウェイ法律事務所」という字幕は、オリジナル版だとその看板がアップになる前から表示されていたが、ハイビジョンリマスター版では看板のアップのカットにぴったり重ねて表示される。
 帰宅したピーターを迎えるベーカー夫人の台詞は、原語だと最初以外は歓声で、具体的な言葉になっていない。また、離れでアンドルーが亡くなっているのを発見して、ベーカー巡査部長とポワロを呼んでくるように言われたバイオレットが「はい」と答える台詞や、ミス・カンピオンが個人で学位授与をおこなう際の彼女やバイオレットの台詞があるのは日本語音声のみ。
 アンドルーの屋敷クラブツリーはウェスト・サセックス州ストリントン近郊セイカムにあるリトル・セイカムだが、アンドルーの遺体が発見された離れはウェスト・ウィカム・エステイトの風の神殿で、クラブツリーへ向かうヘイスティングスの車もその横を通過している(そのために、離れ周辺に場面が切り替わると空が曇る)。このウェスト・ウィカム・エステイトは、ピーター・ユスチノフ主演の「死者のあやまち」でナス屋敷、マックス・アイアンズ主演「ねじれた家」ではスリー・ゲイブルズの一部として撮影に使われたほか、ジュリア・マッケンジー主演の「ミス・マープル」シリーズでも、そのイタリア式の邸宅で、「ポケットにライ麦を」のマッケンジー夫人が入居している介護施設や、「終わりなき夜に生まれつく」のローマの場面が撮影された。地下鉄リバプール・ストリート駅の地上部分として撮影に使われたのは現地ではなく、ホワイトヘイブン・マンションことフローリン・コートのすぐ近くにあるスミスフィールド・マーケット。ミス・レモンとヘイスティングスが記録を調べに行った病院は元ロング・グローブ病院だが、本作の撮影された1992年に閉鎖され、建物も解体されて現存しない。ただし、その一部は近隣の再開発で新しく建てられた建物に組み込まれており、劇中で見られる時計台などを現在も目にすることができる。
 ドクター・プリチャード役のリチャード・ダーデンは、ジェラルディン・マクイーワン主演の「ミス・マープル」の一篇、「書斎の死体」ではプレスコット氏役を、ピーター・ベーカー役のニール・ステュークは、ジュリア・マッケンジー主演の「ミス・マープル」の一篇、「鏡は横にひび割れて」でヘイドック医師役を演じている。また、ジョン・シダウェイ役のテレンス・ハーディナンは、ジョーン・ヒクソン主演の「ミス・マープル」の一篇、「スリーピング・マーダー」でウォルター・フェーン役を演じているほか、デレク・ジャコビ主演の「修道士カドフェル」シリーズではラドルファス修道院長役を務めている。その際、本作でシダウェイ役の吹替を務めた山野史人さんは主役のブラザー・カドフェルを演じており、ラドルファス修道院長の吹替は、本作ではドクター・プリチャード役の大木民夫さんが務めた。ジョン・ソウ主演の「主任警部モース」シリーズでは、前述のリチャード・ダーデンが「ジェリコ街の女」のアラン・リチャーズ役、同じくテレンス・ハーディナンが「ウッドストック行き最終バス」のクライブ・パーマー役、学部生役のジョージ・ビーチが「森を抜ける道」のレントン巡査刑事役で出演。セーラ・シダウェイ役のロウェナ・クーパーは、フランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演の「二人で探偵を」シリーズ「婚約者失踪の謎」のイルマ・クレイバー博士役や、ジョン・ネトルズ主演の「バーナビー警部」シリーズ「流浪の馬車がやって来る」のティリー・ディンズデール役でも見ることができ、前者での吹替はミス・レモンと同じ翠準子さんである。一方、セーラ・シダウェイの吹替を務めた麻生美代子さんは、クリスティーが夢のなかでポワロと競演するドラマ「マーダー・バイ・ザ・ブック」で、ペギー・アシュクロフト演じるクリスティーの吹替を担当。「バーナビー警部」シリーズには、ミス・カンピオン役のスーザン・トレイシーも、「祈りの館に死が宿る」のフェリシティ・ガムラン役で出演している。
 » 結末や真相に触れる内容を表示
  1. [1] ヴィヴィアン・H. H. グリーン (訳: 安原義仁, 成定薫), 『イギリスの大学 その歴史と生態』, 法政大学出版局, 1994, pp. 140-141, 149-152
  2. [2] Mark Aldridge, Agatha Christie's Poirot: The Greatest Detective in the World, HarperCollinsPublishers, 2020, pp. 386-387

ロケ地写真

カットされた場面

日本

オリジナル版

[03:30/0:27]アンドルーのスピーチ
[03:59/0:21]アンドルーのスピーチ
[04:09/0:24]アンドルーのスピーチ
[04:13/2:22]ロバートがスピーチをし、野次にバイオレットが抗議する場面 〜 討論会後のアンドルー、バイオレット、ロバートの会話
[06:31/0:47]クラブツリーのパーティの場面の後半、大学での討論に関係した部分
[06:53/0:12]アンドルーとシダウェイの会話
[12:28/1:47]アンドルーの遺体発見後のポワロたちのやりとり

ハイビジョンリマスター版

なし

映像ソフト

  • ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX3」にも収録
  • ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX2」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 6」にも収録
  • ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
  • ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 2」に収録
2024年3月21日更新