砂に書かれた三角形
Triangle at Rhodes

放送履歴

日本

オリジナル版(45分00秒)

  • 1990年02月24日 22時00分〜 (NHK総合)
  • 1992年04月13日 17時05分〜 (NHK総合)
  • 1998年10月15日 15時10分〜 (NHK総合)
  • 2003年05月21日 18時00分〜 (NHK衛星第2)

ハイビジョンリマスター版(50分00秒)

  • 2015年11月18日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2016年05月11日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2020年05月09日 17時10分〜 (NHK BSプレミアム)
  • 2021年10月18日 09時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2022年01月31日 13時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2022年07月13日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)
  • 2022年09月17日 28時07分〜 (NHK BSプレミアム)
  • エンディング後半の画面左部に次回の放送案内の字幕表示あり

海外

  • 1989年02月12日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 「砂にかかれた三角形」 - 『死人の鏡』 クリスティー文庫 小倉多加志訳
  • 「砂にかかれた三角形」 - 『死人の鏡』 ハヤカワミステリ文庫 小倉多加志訳
  • 「砂に書かれた三角形」 - 『砂に書かれた三角形』 創元推理文庫 宇野利泰訳

原書

雑誌等掲載

  • Triangle at Rhodes, This Week, 2 February 1936 (USA)
  • Poirot and the Triangle at Rhodes, The Strand, May 1936 (UK)

短篇集

  • Triangle at Rhodes, Murder in the Mews, Collins, March 1937 (UK)
  • Triangle at Rhodes, Dead Man's Mirror, Dodd Mead, June 1937 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // 砂に書かれた三角形, TRIANGLE AT RHODES / Dramatized by STEPHEN WAKELAM, Script Consultant CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / 砂に書かれた三角形 // TRIANGLE AT RHODES / Dramatized by STEPHEN WAKELAM, Script Consultant CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 スティーブン・ウェイクラム 監督 レニー・ライ 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄  パメラ 高島雅羅 バーンズ少佐 大木民夫  中尾隆聖 榊󠄁原良子 藤田淑子 千田光男 峰 恵研 加藤 治 矢田耕司 有本欽隆 徳丸 完 荘 真由美 沢木郁也 梅津秀行 / 日本語版 宇津木道子  山田悦司 福岡浩美 南部満治 金谷和美

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 スティーブン・ウェイクラム 演出 レニー・ライ 制作 LWT (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄  パメラ 高島 雅羅 バーンズ少佐 大木 民夫  中尾 隆聖 榊󠄀原 良子 藤田 淑子 千田 光男 峰 恵研 加藤 治 矢田 耕司 有本 欽隆 徳丸 完 荘 真由美 沢木 郁也 梅津 秀行 松井 範雄  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Pamela Lyall: FRANCES LOW; Commander Chantry: JON CARTWRIGHT; Valentine Chantry: ANNIE LAMBERT; Douglas Gold: PETER SETTELEN; Marjorie Gold: ANGELA DOWN; Major Barnes: TIMOTHY KNIGHTLEY; Police Inspector: AL FIORENTINI; Skelton: ANTHONY BENSON; Hotel Manager: PATRICK MONCKTON; Greek Cashier: DIMITRI ANDREAS; Greek Girl: GEORGIA DERVIS; Good Woman: SOPHIA OLYMPIOU; Custom's Officer: TILIMAHOS EMANUEL; Purser: YANNIS HADJIYANNIS; Italian Policeman: STEPHEN GRESSIEUX; Dicker: GEORGE LITTLE; Postman: MARTYN WHITBY / Developed for Television by Picture Partnership Productions / (中略) / Production Designer: MIKE OXLEY / Director of Photography: PETER JESSOP. BSC / Music: CHRISTOPHER GUNNING / Executive Producers: NICK ELLIOTT, LINDA AGRAN / Producer: BRIAN EASTMAN / Director: RENNY RYE

あらすじ

 休暇でロードス島を訪れていたポワロは、同じく滞在客のゴールド夫妻とチャントリー夫妻のあいだに漂う不穏な雰囲気が気がかりだった。一度は和解したかに見えた彼らだったが、バレンタイン・チャントリーは夫が飲むはずだった飲み物を飲んで帰らぬ人に……

事件発生時期

1935年9月中旬

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
パメラ・ライルホテルの滞在客
ダグラス・ゴールドホテルの滞在客
マージョリー・ゴールドホテルの滞在客、ダグラスの妻
トニー・チャントリーホテルの滞在客、海軍中佐
バレンタイン・チャントリーホテルの滞在客、トニーの妻
バーンズホテルの滞在客、陸軍少佐

解説、みたいなもの

 'Triangle at Rhodes (ロードス島の三角形)' という原題が示すように地中海のロードス島を舞台とする一篇で、撮影は実際に現地で行われた。そんな本作は異国情緒豊かな旅行ものであると同時に、港で厳しい取り調べが行われていたり、黒シャツ党が闊歩していたりする様子が見られるなど、第二次大戦へと向かう時代の空気も感じさせる。なお、字幕やダグラス・ゴールドの台詞にあるように、当時のロードス島はイタリア領。ゴールドが「ギリシャかトルコ領だと思ってました」とも言うように、紀元前1500年頃からギリシャ人が居住し、ヘレニズム文明の中心地の一つとなった土地である一方、地理的にはトルコ本土に近く、伊土戦争でイタリアが占拠する前はトルコ領だった。現在は1947年のパリ条約によってギリシャ領になっている。クリスティー自身も1931年の秋に数週間ロードス島を訪れ、その滞在中に「エッジウェア卿の死」の大部分を執筆し、またその帰途では「オリエント急行の殺人」の着想の一つとなった、オリエント急行の立ち往生に遭遇している(ただし、その原因は大雪ではなく洪水だった)[1]
 結末は異なるものの、状況設定や一部の展開は長篇「白昼の悪魔」によく似ており、「白昼の悪魔」の原型と見ることもできる。原作の登場人物の中では、パメラの友人のセアラがカットされたほか、バーンズ将軍が少佐に置き換えられ、ポワロの調査にとって重要な役割を与えられた。物語にこうしたスパイ風味を加えるアレンジも、このドラマシリーズで何度か見られる手法の一つ。ところで、冒頭でパメラがしつこくつきまとう少佐から逃げているのもドラマオリジナルの場面だが、そのあと、パメラも少佐もそんな素振りをまったく見せないのはどういうことになったのだろう。
 冒頭、配達された手紙を受け取ったドアマンが配達員を呼び止めて「56B号室宛はだめだよ。みんな休暇を取ってる」と言うが、受け取った郵便物を返す様子はない。これは、その言い方のイントネーションもあって、そのとき配達されたのはほかの部屋宛で、次の配達にそなえて注意をうながしたように聞こえるが、その前半部分は原語だと 'It's no good leaving all this stuff for 56B. (この56B号室宛はぜんぶ置いていっても無駄だよ)' という表現で、郵便物はすべて56B号室宛であり、せっかく届けてもらっても無駄骨であったと伝える趣旨である。
 マージョリーがビーチで「わたし、すこし焼きたいの」と言いながら、直後に「きれいに焼ければいいんですけど、わたしはいつもすぐにそばかすができてしまって」と言ったり、「さっそく泳いでみましょうよ」と速やかに海へ入っていくのは言動が一貫していないが、原語だと当初の彼女の台詞は 'so I can get a little bit of sun. (ここなら日当たりも悪くなさそうだし) I feel so dreadfully faded, but freckle rather than going brown. (わたしも肌が青白いとは思うんですけど、きれいに焼けずにそばかすができてしまうの)' という表現で、原語の get the sun (日に当たる) は必ずしも積極的に肌を焼く意図を示さない。
 ホテルでポワロが読んでいる新聞の見出しの「アビシニアにイタリアの脅威せまる」にあるアビシニアとはエチオピアのこと。エチオピアは劇中翌年の1936年にイタリアの植民地にされることになる。またこの場面では、ポワロが新聞を動かしたときに、中のページが白紙なのが見えてしまっている。
 出発間際のポワロとバーンズ少佐の会話で、ポワロが「釣りでお忙しいでしょう」と言う台詞は、原語では忙しい理由を釣りに限定していない。
 アポロの神殿からホテルに戻ったバレンタインがピンクジンを飲んで「ああ、一気に飲んじゃった」と言うが、実際には一口飲んだだけで、飲み干すほどには飲んでいない。この台詞は原語だと 'Whoo, I needed that. (ああ、これがほしかったのよ)' となっている。
 ポワロが警察署をあとにしてホテルへ戻ってきた際、ホテルの外観を映したカットに、なぜか座って新聞を読むポワロが映っている。おそらくは、ダグラスとバレンタインが城壁見物から戻ってくる直前の場面として撮影した映像を、ポワロが映っていることに気づかず使いまわしてしまったのだろう。
 本作の一部の場面では、めずらしいことにポワロがスーツの前のボタンを留めているのを見ることができる。劇中の時系列では、その白いスーツのボタンは留められたりはずされたりをくり返すが(ついでに、ボタンホールに挿しているバラのつぼみも、場面によってひらきかけたり閉じたりするが)、ボタンが留められているのは旧市街の屋外の場面に集中しており、おそらくはその場面が連続して撮影されたのだろう。また、この白いスーツはダブルであることでもめずらしく、ポワロが着用するダブルのスーツは、本作のこれのみである。
 日本語音声において、イタリア語やギリシャ語の会話は大半を英語同様に日本語に吹き替えられているが、老婆と少女のあいだで交わされる会話の一部は原音のまま。原語版で英語以外の台詞を、日本語版でも吹き替えずに原音のまま使用するのは海外ドラマや洋画でしばしば見られるやり方で、たとえばジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」の一篇「ギリシャ語通訳」などでも見ることができる。
 本作の撮影は、前述のとおり、現ギリシャのロードス島における現地ロケ。ただし、一部の場面では複数の離れた場所で撮影した映像をつなぎ合わせて一つの場所のように見せており、港は旧港のマンドラキ港だが、その税関の建物は新港の旅客港にあるため、港を展望するカットでは見当たらず、建物を背にした向きで見える柱はセットと見られる。同様に、パレス・ホテルの建物はロードス館(ロディアキ・エパヴリ)だが、その近くのビーチ周辺はカリテア・スプリングスで撮影されている。また、一同が食事をとったレストラン周辺もカリテア・スプリングスでの撮影である。ほかの撮影地は、遠出先の山がモノリソス城跡、警察署がロードスのタウンホール、旧市街の街路はプラトノス通りからピタゴラ通り、イポトン通り(騎士団通り)など。ハイビジョンリマスター版でのみ見られる城壁近くの庭園は音と光の庭園、同じく遺跡発掘現場は乙女の塔周辺である。
 パメラを演じるフランシス・ロウは、ジョーン・ヒクソン主演の「ミス・マープル」の一篇、「ポケットにライ麦を」のパトリシア・フォーテスキュー役でも見ることができる。また、バレンタイン・チャントリー役のアニー・ランバートは、フランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演の「二人で探偵を」の一篇、「キングで勝負」ではレディー・メリベール役を演じている。ジョン・ソウ主演の「主任警部モース」シリーズでは、そのアニー・ランバートを「ジェリコ街の女」のアデル・リチャーズ役、バーンズ少佐役のティモシー・ナイトリーを「悔恨の日」でモースの遺言書をつくる事務弁護士役で見ることができる。
 ホワイトヘイブン・マンションのドアマン、ディッカー氏が、前回の「4階の部屋」につづいて登場。しかし、その吹替は岸野一彦さんから有本欽隆さんに交代している。なお、ほかにホテルの支配人の吹替も、同じく有本欽隆さんの声である。
 ダグラス・ゴールドの吹替の中尾隆聖さんは、2002年1月3日〜4日にNHK教育で放送された「フェニックスと魔法のじゅうたん」で、デビッド・スーシェ(が声を当てたフェニックス)の吹替を担当したほか、2023年の舞台「ホロー荘の殺人」ではヘンリー・アンカテル役を演じている。また、バーンズ少佐の吹替の大木民夫さんも、映画「ダイヤルM」(吹替が小川真司さん・深見梨加さん主演のもの)において、デビッド・スーシェの吹替を担当。加えて、チャントリー中佐の吹替の千田光男さんと、前述の有本欽隆さんは、映画「パトリオット・ゲーム」で、いずれもヒュー・フレイザーの吹替を担当している(羽佐間道夫さん主演のバージョンで千田さん、菅生隆之さん主演のバージョンで有本さんが担当)。また、チャントリー夫人の吹替の藤田淑子さんは、のちにミセス・オリヴァーを演じるゾーイ・ワナメイカーが、 BBC のドラマ「ドクター・フー」シリーズにカサンドラ役で出演したときに、その吹替を担当した。
 ハイビジョンリマスター版で、ポワロが「海外でのイギリス人の行動は、実に奇妙です」と言ったのに対して、パメラが「でも泥棒はしませんわ」と応じた台詞は、原語だと 'At least, he's not a bottom pincher, Mr Poirot. (すくなくともお尻をつねったりはしませんわ)' という表現。これは泥棒ではなく、男性が女性に興味があることを示す行為である。また、やはりハイビジョンリマスター版のみで見られる発掘現場でのポワロとマージョリーの会話に、「真水と海水が化石化してるんです」という台詞があるが、水が直接化石化することはない。原語では 'They have some fresh water and sea water fossils.' という表現で、これは真水に棲む生物と海水に棲む生物の両方の化石が一つの場所に存在しているという趣旨である。
 最後にポワロの乗った車が走り去る際、車のドアに撮影機材と見られるスタンドが映り込んでしまっている。また、冒頭の雨のホワイトヘイブン・マンション前の場面では、雷の音までしながら玄関のガラスドアに映った景色は晴れているようにも見えるのだが、雨に濡れた敷石はリゾート地と対比するための人為的な演出なのだろうか。それとも、天気の変わりやすいイギリスらしく、単に撮影中に晴れてきただけなのだろうか。
 デジタル放送で放送データに載っているあらすじでは、ポワロの滞在先を「避暑地」と表現しているが、ロードス島はイギリスより緯度も低く、温順な地中海性気候の土地であって、その日中をポワロも「炎天下」と表現している。
 » 結末や真相に触れる内容を表示
  1. [1] ジャネット・モーガン (訳: 深町真理子, 宇佐川晶子), 『アガサ・クリスティーの生涯 下』, 早川書房, 1987, pp. 49-55

カットされた場面

日本

オリジナル版

[03:53/0:34]バーンズ少佐に追われたパメラがポワロと路地裏を歩く場面
[10:46/2:13]ダグラスとバレンタインの散歩中の会話 〜 発掘現場でのポワロとマージョリーの会話
[21:15/0:21]ホテルを発つ前のポワロとバーンズ少佐の会話の後半
[35:01/1:14]鑑識の家を出たポワロとパメラが、毒の出所を探して路地裏を歩く場面
[38:20/0:12]ホテルへ引き返すポワロとパメラ 〜 支配人がフロント係を叱責しているところへ来あわせるポワロたち

ハイビジョンリマスター版

なし

映像ソフト

  • ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX1」にも収録
  • ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX1」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 1」にも収録
  • ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
  • ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 1」に収録
2023年6月11日更新