猟人荘の怪事件
The Mystery of Hunter's Lodge

放送履歴

日本

オリジナル版(44分00秒)

  • 1992年07月30日 20時15分〜 (NHK総合)
  • 1994年03月03日 17時05分〜 (NHK総合)
  • 1998年12月21日 15時10分〜 (NHK総合)
  • 2003年07月18日 18時00分〜 (NHK衛星第2)

ハイビジョンリマスター版(50分00秒)

  • 2016年05月21日 16時00分〜 (NHK BSプレミアム)※1
  • 2016年10月26日 17時00分〜 (NHK BSプレミアム)※2
  • 2020年10月17日 17時11分〜 (NHK BSプレミアム)※3
  • 2021年11月19日 09時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2022年03月09日 13時00分〜 (NHK BS4K)
  • 2023年01月04日 21時00分〜 (NHK BSプレミアム・BS4K)※4
  • ※1 エンディング冒頭の画面上部に次回の放送案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※2 エンディング冒頭の画面下部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※3 エンディング最後の画面下部に次回の放送時間案内の字幕表示(帯付き)あり
  • ※4 BSプレミアムでの放送は、オープニング冒頭の画面左上にBS4K同時放送のアイコン表示あり

海外

  • 1991年03月10日 (英・ITV)

原作

邦訳

  • 「狩人荘の怪事件」 - 『ポアロ登場』 クリスティー文庫 真崎義博訳
  • 「猟人荘の怪事件」 - 『ポアロ登場』 ハヤカワミステリ文庫 小倉多加志訳
  • 「ハンター荘の謎」 - 『ポワロの事件簿1』 創元推理文庫 厚木淳訳

原書

雑誌等掲載

  • The Mystery of Hunter's Lodge, The Sketch, 16 May 1923 (UK)
  • The Mystery of Hunter's Lodge, The Blue Book Magazine, June 1924 (USA)

短篇集

  • The Mystery of Hunter's Lodge, Poirot Investigates, The Bodley Head, 21 March 1924 (UK)
  • The Mystery of Hunter's Lodge, Poirot Investigates, Dodd Mead, 1925 (USA)

オープニングクレジット

日本

オリジナル版

名探偵ポワロ / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / DAVID SUCHET // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / 猟人荘の怪事件, THE MYSTERY OF HUNTER'S LODGE / Dramatized by T R BOWEN / Script Consultant CLIVE EXTON

ハイビジョンリマスター版

名探偵ポワロ / DAVID SUCHET / AGATHA CHRISTIE'S POIROT / 猟人荘の怪事件 // HUGH FRASER / PHILIP JACKSON / THE MYSTERY OF HUNTER'S LODGE / Dramatized by T R BOWEN / Script Consultant CLIVE EXTON

エンディングクレジット

日本

オリジナル版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 T・R・ボウエン 監督 レニー・ライ 制作 LWT(イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口芳貞  ゾイ 田島令子 ロジャー 樋󠄁浦 勉 大塚周夫 伊藤和晃 緒方賢一 田村錦人 前田敏子 千田光男 さとうあい 梁田清之 木藤聡子 小関 一 / 日本語版 宇津木道子  山田悦司 福岡浩美 南部満治 金谷和美

ハイビジョンリマスター版

原作 アガサ・クリスティー 脚本 T・R・ボウエン クライブ・エクストン 演出 レニー・ライ 制作 LWT (イギリス) / 出演 ポワロ(デビッド・スーシェ) 熊倉 一雄 ヘイスティングス(ヒュー・フレイザー) 富山 敬/安原 義人 ジャップ警部(フィリップ・ジャクソン) 坂口 芳貞  ゾイ 田島 令子 ロジャー 樋󠄀浦 勉  大塚󠄀 周夫 伊藤 和晃 緒方 賢一 田村 錦人 前田 敏子 千田 光男 さとう あい 梁田 清之 木藤 聡子 小関 一 梯 篤司 野中 秀哲  日本語版スタッフ 翻訳 宇津木 道子 演出 山田 悦司 音声 金谷 和美 プロデューサー 里口 千

海外

オリジナル版

Hercule Poirot: DAVID SUCHET; Captain Hastings: HUGH FRASER; Chief Inspector Japp: PHILIP JACKSON; Zoe Havering: DIANA KENT; Roger Havering: JIM NORTON; Archie Havering: SHAUGHAN SEYMOUR; Jack Stoddard: ROY BOYD; Harrington Pace: BERNARD HORSFALL; Ellie: VICTORIA ALCOCK; Joan: CLARE TRAVERS-DEACON; Sergeant Forgan: CHRISTOPHER SCOULAR; Constable Cooke: RAYMOND TRICKITT; Mr Anstruther: ARTHUR WHYBROW; Mrs Middleton: DENYSE ALEXANDER / Developed for Television by Carnival Films / (中略) / Production Designer: MIKE OXLEY / Director of Photography: NORMAN LANGLEY / Music: CHRISTOPHER GUNNING / Executive Producer: NICK ELLIOTT / Producer: BRIAN EASTMAN / Director: RENNY RYE

あらすじ

 ヘイスティングスの猟につきあって凍える猟場に2時間もいたポワロは、風邪を引き込んでベッドから起きられなくなってしまう。そんななか、ヘイスティングスの友人であるロジャーの伯父が殺され、家政婦が姿を消した……

事件発生時期

不詳

主要登場人物

エルキュール・ポワロ私立探偵
アーサー・ヘイスティングスポワロの探偵事務所のパートナー、陸軍大尉
ジェームス・ジャップスコットランド・ヤード主任警部
ロジャー・ヘイバリングヘイスティングスの友人
ゾイ・ヘイバリングロジャーの妻
ハリントン・ペースロジャーの伯父、愛称ハリー
アーチー・ヘイバリングロジャーの従弟
ジャック・スタッダード猟場の番人、ペースの腹違いの弟
ミドルトン夫人家政婦
エリー猟人荘のメイド
ジョーン猟人荘のメイド、ジャックと恋仲
アンストラザーロンドン中部鉄道駅員
フォーガン地元警察の巡査部長
クック地元警察の巡査

解説、みたいなもの

 主要な登場人物のうち、原作に登場するのはヘイバリング夫妻とペース氏、ミドルトン夫人だけで、残りはすべてドラマオリジナル。駅や宿の名前なども原作とは変更されている。原作ではインフルエンザでベッドを離れられないポワロの代わりにヘイスティングスが現地で捜査に当たり、ポワロはロンドンでベッド・ディテクティブを演じていたが、ドラマではヘイスティングスの猟に同行する形でポワロも現地へ出向き、現地の寒さで体調を崩す。実際、極寒のヨークシャーでの撮影は、スーシェが体を太く見せるパッドを身につけ、その下に防寒用の下着をつけていても凍えるほどだったという[1]。ドラマで追加された要素が多いなかで、ヘイバリング夫人がかつて女優だったという原作の設定や、対になった拳銃の他方を用いて線条痕による拳銃個体の同定をおこなう現実に即さない展開は省略されている。
 ハイビジョンリマスター版で、ヘイスティングスが猟の持ち場に着いて「大猟を祈ろう」と言った直後に聞こえる台詞は、日本語だと「まだ銃を構えないでください」とヘイスティングスに注意するものだが、原語では 'They're breaking, Mr Pace. (追い立ててますよ、ペースさん)' というペースの持ち場から聞こえた台詞だった。こうした猟は、勢子が鳥を驚かせて飛び立たせ(旗のようなものを振りながら横並びに歩いている場面がその描写である)、それを銃で撃つことでおこなうもので、原語の台詞はそれが始まっていることを伝えており、日本語とは逆の趣旨である。また、ポワロがライチョウ料理について「ベルギーではオオライチョウがいちばん貴重で、それをエゾライチョウで代用します (It is most rare in my country, the tétras. We make do with the gélinotte, the wood grouse.)」と言う台詞があるが、「エゾライチョウ」ことフランス語の gélinotte はエゾライチョウを含むエリマキライチョウ属の鳥を、「オオライチョウ」こと tétras はそれ以外のライチョウ亜科の鳥のうち、冬に羽の色が変わらないものを指す言葉。 tétras については、オオライチョウ (capercaillie) もその一種ではあるものの、あまり食用にはしないようで、ここではイギリスで猟鳥とされ、ポワロが今回お目当てとしているアカライチョウ (red grouse) を指していると思われる。
 家政婦「ミドルトン夫人 (Mrs Middleton)」の原語の敬称 Mrs は一般に既婚女性に対して用いられるが、家政婦など一部の職業の女性にはその婚姻状態によらず用いることがある。
 猟人荘に着いたポワロが煖炉のことを「イギリスの好ましい伝統の一つ」と言う場面があるが、原作のポワロは、薪の火については「足の裏を(中世の一種の拷問みたいに)あぶることができたところで、肩のうしろで渦巻くすきま風は何も変わらないという意見の持ち主」(『ポアロのクリスマス』)であり、その炎の形についても「『いつも不規則で形が定まらない! 均整のとれたためしがないのだから』」(「黄色いアイリス」)と文句を言っている。
 猟のあとの昼食会でペースが女性客に披露したある男とのやりとりは、原語だと a bolshie から訊かれたと言っており、つまりは共産主義者から資産家としての人生の意義を問い詰められたが、悪びれることなく皮肉をもって返したという趣旨である。
 ヘイスティングスがポワロに「〔ハリー・ペースは〕自分の拳銃で撃たれたんです」と言う際、原語では「拳銃」を revolver (リボルバー) と言っているが、のちの謎解きの際に映る犯人が構えているのはセミオートマチックである。
 フォーガン巡査部長がハリー・ペースが金持ちであることを示すなかで「住まいはロンドン」と言うが、この原語は 'House in Belgravia. (ベルグレービアに家があります)' という表現で、このベルグレービアはロンドンのなかでも高級住宅街である。
 ヘイバリング夫人が犯人を描写した「よく漫画に出てくるアナーキストのようだったわ (He looked like one of those anarchists in a cartoon in Punch)」という台詞の原語に出てくる Punch (パンチ) とはイギリスの有名な風刺漫画雑誌の名前で、ここでの「漫画」は新聞にあるような一枚絵の風刺イラストのイメージ。「愛国殺人」のモーリー歯科医院の待合室でポワロが読んでいたり、「白昼の悪魔」のホテルのラウンジでジャップ警部が読んでいたりするのがその『パンチ』誌で、同誌は1841年創刊の歴史を持ち、本作がイギリスで制作・放送された当時も存続していたが、1992年4月に一度休刊した。日本語の「ポンチ絵」という言葉も、この雑誌の名前が由来とされる。また、夫人は犯人が来たという時刻を、日本語だと「7時10分くらい前です」と言うが、原語は 'About a quarter to seven. (7時15分くらい前です)' で、原語は5分ほど早い。
 ポワロがロジャーに「あなた、9時にロンドンに着いたって言ってますね?」と言うが、事前に言っていたのはキングズ・クロス駅から歩いて10時にクラブに着いたことだけで、ロンドンに着いた時刻は言っていない。ただ、これも事前には言っていないが、原語ではロジャーのクラブはセント・ジェームスにあることになっており、キングズ・クロス駅から歩けばおよそ1時間の距離ではある。一方、ヘイスティングスが「ハリー・ペースはアイルランドで、パートナーを騙し破滅させた」と言い、これは事前のアーチーへの聞き込みに基づく発言だが、日本語ではパートナーを騙した場所には触れておらず、それがわかったのは原語音声のみである。また、ジャックが「あの人〔ミドルトン夫人〕はこう言ってた。ヘイバリングの奥さんがヒステリックになっているから、警察が来る前に、自分は薬を飲ませて落ち着かせなきゃいけない。それで俺に呼びに行かせたんだ」と言うが、実際にはペース氏が撃たれたので警察を呼んでほしいことだけを伝えて、猟人荘へ駆け戻っていた。
 今回の脚本を担当したT・R・ボウエンは、ジョーン・ヒクソン主演の「ミス・マープル」シリーズや、ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズなどでも一部脚本を手がけているだけでなく、「ミス・マープル」シリーズでのレイモンド・ウェスト役(「スリーピング・マーダー」を除く)や、「シャーロック・ホームズの冒険」の「瀕死の探偵」でダマント弁護士役を演じているのもこの人。アーチー・ヘイバリング役のソーガン・シーモアも、同「瀕死の探偵」にペンローズ・フィッシャー役で出演しているほか、「ミス・マープル」シリーズの「カリブ海の秘密」にもネイピア総督役で出演している。「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズの「バスカビル家の犬」では、ハリー・ペース役のバーナード・ホースフォールがフランクランド役で出演しているほか、猟人荘の撮影地であるカスターン・ホールもメリピット荘として登場する。アンストラザー氏が勤めるロンドン・ミッドランド・アンド・スコティッシュ鉄道は、実際にはキースリー・アンド・ワース・バレー鉄道で、アシュビー・ピカードの駅はハワース駅、アシュビー・ウォルケンの駅はダメムズ駅。同鉄道も「シャーロック・ホームズの冒険」でよく撮影に使われ、同じ駅は出てこないものの、「ぶなの木屋敷の怪」や「最後の事件」、「修道院屋敷」、「ウィステリア荘」、「ブルース・パーティントン設計書」に登場する。レッド・グロース・ホテルとして撮影に使われたのは、ダービシャーのスピンクヒルにあるパーク・ホールである。一方、フォーガン巡査部長役のクリストファー・スクーラーは、フランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演「二人で探偵を」シリーズの「かくれ造幣局の謎」のジミー・フォークナー大尉役や、シェリル・キャンベル主演「七つのダイヤル」のビル・エバーズリー役、ジャック・スタッダード役のロイ・ボイドは、やはりフランセスカ・アニスとジェームス・ワーウィック主演の「なぜエバンズに頼まなかったか」のアラン・カーステアズ役でも見ることができる。ミドルトン夫人役のデニーズ・アレグザンダーは、ジョン・ソウ主演「主任警部モース」シリーズの「ニコラス・クインの静かな世界」に映画館の支配人役で出演。
 ロジャーが汽車で戻ってくる場面では、遠景に現代の自動車が走っているのが写ってしまっている。また本篇とは関係ないが、下で紹介している VHS ビデオのラベルでは、原題の of が at と誤記されていた。
  1. [1] David Suchet and Geoffrey Wansell, Poirot and Me, headline, 2013, p. 119

カットされた場面

日本

オリジナル版

[03:12/2:02]一行が持ち場に向かい、準備をして、猟を始める場面 〜 ポワロとヘイバリング夫人のライチョウ料理の会話
[04:12/0:44]ヘイバリング夫人がアーチーのことをポワロに頼み猟人荘に引きあげる場面
[20:18/0:59]ヘイスティングスとジャップ警部が猟人荘をあとにする場面 〜 ブラックベリー・ティーをかき混ぜるアンストラザー
[23:06/0:40]立ち去るアーチーを見送るヘイスティングス 〜 ジャップ警部の部屋にポワロが電話をかけてくる場面
[25:15/0:42]ポワロとヘイスティングスが警察まで来て、ジャップ警部たちとミドルトン夫人を待つ場面
[32:28/0:24]自転車を見つけたポワロたち4人が猟人荘に戻ってくる場面の前半

ハイビジョンリマスター版

なし

映像ソフト

  • [VHS] 「名探偵エルキュール・ポアロ 第10巻 猟人荘の怪事件」(字幕) 日本クラウン
  • [DVD] 「名探偵ポワロ 16 戦勝舞踏会事件, 猟人荘の怪事件」(字幕・吹替) ビームエンタテインメント(現ハピネット・ピクチャーズ※1
  • [DVD] 「名探偵ポワロ [完全版] 16 戦勝舞踏会事件, 猟人荘の怪事件」(字幕・吹替) ハピネット・ピクチャーズ※2
  • [DVD] 「名探偵ポワロ DVDコレクション 57 猟人荘の怪事件」(字幕・吹替) デアゴスティーニ・ジャパン※3
  • [BD] 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX Disc 8 スペイン櫃の秘密, 盗まれたロイヤル・ルビー, 戦勝舞踏会事件, 猟人荘の怪事件」(字幕/吹替) ハピネット・ピクチャーズ※4
  • ※1 「名探偵ポワロ DVD-BOX2」にも収録
  • ※2 「名探偵ポワロ [完全版] DVD-BOX1」「名探偵ポワロ [完全版] 全巻 DVD-SET」「名探偵ポワロ [完全版] DVD-SET 4」にも収録
  • ※3 吹替は大塚智則さん主演の新録で、映像もイギリスで販売されているDVDと同じバリエーションを使用
  • ※4 「名探偵ポワロ Blu-ray BOX vol. 1」に収録
2024年3月21日更新